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自動化を知る
物流倉庫の自動化完全ガイド!メリット・デメリット、導入の手順と事例
自動化とは
時代の要請により物流倉庫の自動化が進みつつあります。これまで物流業界は、他業界と比較してアナログな作業が主流でした。そのため具体的に自動化を検討するにあたって、抵抗やハードルを感じたり、「どうすれば良いのかわからない」と悩んだりするケースもあるでしょう。
本記事では、物流倉庫の自動化についてメリット・デメリット、自動化成功へのポイント、自動化設備の種類、自動化を進める手順、導入事例をまるっと解説します。
全容が掴める内容となっておりますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
物流倉庫の自動化とは
物流倉庫の自動化とは、設備やロボットを導入して、人の手によって遂行されてきた倉庫内の作業を自動化する施策です。加速する人手不足に対応するために、先を見据えて検討や導入を始める企業が増えつつあります。
入庫、保管、ピッキング、搬送、梱包、出庫など、物流の工程ごとに自動化設備やロボットの開発が進んでいます。課題に合わせたソリューションを選択しましょう。
物流倉庫を自動化するメリット5つ
メリットの理解は、自動化設備導入の目的設定に役立ちます。ここでは、物流倉庫を自動化するメリットを5つ解説します。
メリット1.生産性が向上する
物流倉庫を自動化するメリットの1つ目は、生産性の向上が期待できる点です。人の手による作業は、モチベーションや体調が生産性を左右します。
一方で、自動化設備は疲れを知らず、シフトの調整や休息が不要です。必要に応じて、早朝や夜間も稼働し続けるオペレーションの構築が可能となります。
メリット2.属人性を排除できる
物流倉庫を自動化するメリットの2つ目は、属人性を排除できる点です。従来、経験や勘に頼っていた作業は、自動化設備の導入により標準化されます。
新人スタッフが作業にあたっても、ベテランスタッフと同等の成果を発揮できるようになるでしょう。高い時給のスタッフに依存する必要がなくなり、作業あたりのコストが下がる効果も見込めます。
メリット3.労働環境が改善する
メリットの3つ目は、3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれるような労働環境を改善できる点です。物流倉庫の自動化により、重いモノを持ち上げたり、運んで歩いたりする動作を減らせます。
「同業他社より働きやすい」とスタッフが感じれば、離職率の低下が期待できます。体力や時間に余裕が生まれ、モチベーションの向上にも繋がるでしょう。
メリット4.コストを抑制できる
メリットの4つ目は、コストが抑制できる点です。人による作業が自動化設備に置き換われば、作業人員および人件費を削減できます。
また従業員の採用と教育にかかるコストを抑制できる効果もあります。今後、少子高齢化の進行により採用の難易度は高くなり、時給も高騰するでしょう。物流倉庫の自動化はコスト抑制に先手を打つ、ひとつの手段です。
メリット5.広告効果がある
メリットの5つ目は、最新の自動化設備導入によって注目を集めた際の広告効果です。業界誌やテレビなどのメディアからインタビューを受けられれば、革新的な技術の活用にチャレンジする企業として認知を得られます。
導入効果として、広告や宣伝にかかる費用を内包していると捉えることもできるでしょう。
メリット6.ヒューマンエラーの削減
メリットの6つ目は、ヒューマンエラーの削減です。人の手による作業は、スタッフの熟練度に関係なくミスが発生する可能性があります。
自動化設備の導入によりミスの発生を防ぐとともに、作業中にミスに気づくことが可能になります。
物流倉庫を自動化するデメリット4つ
次に自動化のデメリットやリスクを紹介します。実際に導入して使ってみたり、導入されている現場で体験・見聞きした内容から代表的なものを4つ解説します。
デメリット1.投資回収ができない
自動化設備は高価で、気軽に導入できるものではありません。ほとんどの場合は社長決裁事案になり、しっかりと効果が出せることを念頭に置かなければなりません。一方で導入した設備をうまく使えなければ「投資回収ができない」あるいは「回収に想定以上の時間がかかる」可能性もあります。
この投資回収ができなくなってしまうケースには、いくつかの原因があります。その中でも意外に見落とされがちなのは、導入規模が小さい場合です。自動化設備導入の効果は規模の経済が働きますので、導入規模が大きければ大きいほど効果が出やすくなる傾向があります。
しかし、実証試験やPoC(概念実証)という名目で小さく始める場合、十分な効果を得ることがより難しくなります。
「いきなり大規模に導入して何かあったらどうしよう」という心理が働いて、小さくスタートすることは多くの現場で取られているアプローチではあります。一方で投資回収が難しくなるということも頭に入れておかねばなりません。
デメリット2.作業応援を入れづらい
これも考えてみれば当然といえば当然なのですが、例えば車の製造ラインを思い浮かべてください。アームロボをいくつも駆動しながら車を組み立てていく工程に、人は介在していますか? きっと補助的に関わっているぐらいの光景をイメージされたのではないでしょうか。
それと同様、自動化設備と人は完全には作業量を分担できないのです。これを物流現場に置き換えて考えてみましょう。
注文がはねて入出荷の物量が増えて、作業が終わらないかもしれない、といった経験はこの記事を読まれている方々であれば多くの方が経験されているのではないでしょうか。そんな時どうされていますか?
いろんな工程から作業が終わったスタッフを応援におくったり、事前に能力不足が分かっていたらスポット作業メンバーを調達したりすると思います。
自動化設備を導入すると、その工程に人をたくさん投入しても出来高は変わりません。デメリットとして、処理量を人的にはあげられないことが挙げられます。
デメリット3.急な故障・老朽化問題が発生する
自動化設備の急な故障や老朽化もデメリットのひとつであり、「自動化設備は導入して終わりではない」といわれる理由です。文句を言わずにたんたんと働いてくれますが、機械的なトラブルやシステム的なトラブルは、どれだけケアしながら運用しても発生します。
また、使っていくうちに老朽化問題も発生してきます。機械ならではのケアもしっかり行っていかなければ、トラブル続きで「人の方が良かった」ということにもなりかねません。
デメリット4.拠点移転時に重荷になる
自動化設備の導入時には、移転の際にどうするのかをしっかり考える必要があります。
自動化設備の種類によっては移設が比較的容易なものもあります。
一方で自動倉庫のような床にアンカーを打ち込んで設置する自動化設備は一筋縄には移設できません。拠点の見直しに伴った移設は、簡単にできないと理解した上で導入の意思決定をする必要があります。
物流倉庫の自動化を成功に導くポイント
自動化設備を導入するデメリットやリスクに対して、どのように考えればいいのでしょうか。課題に対する解決策をひとつずつ見ていきましょう。
投資回収の対策は2つを意識する
投資回収のリスクについては、次の2つを意識してみてください。
ひとつはリスクを取れる範囲で最大規模の自動化設備導入を検討すること。
もうひとつは自動化設備がパフォーマンスを発揮しやすいアイテムを取り扱い対象にすることです。この2つを意識するだけで随分と投資回収の期間が短縮されると思います。
自動化を検討されている企業の多くはどちらかというと、小さく切り出す傾向が強いと感じます。そこを大きく切り出すとしたらどういう自動化ができるかを考えることで、一番効果が出る自動化のプランになります。
さらに、パフォーマンスを発揮しやすいアイテムを取り扱い対象にします。分かりやすく表現すると、規格化された小物アイテムが最もパフォーマンスを発揮するアイテムになります。物流現場はありとあらゆるサイズや特性のアイテムを取り扱いますので、なかなかこの切り出しをするのが難しいのですが、それがポイントとなるのです。
作業応援を入れる発想を捨てた設計を
自動化設備導入の際は「応援を入れる発想」を捨てましょう。人手で作業していた状況から考えると、作業が苦しくなると応援を入れるということが当たり前の選択として染み付いてしまっていると思います。
その考えを一旦リセットし、自動化した工程には応援を入れず、切り出して別のラインを特設するという考え方の工程設計がポイントになります。
梱包工程で考えてみましょう。自動化設備を入れると製封緘工程作業が自動化されるわけですが、その機械の作業はそのままに、マニュアルの梱包ラインを特設できるように考えておくというイメージです。そうすれば機械能力以上の物量を処理しないといけなくなった際でも、人手で作業をカバーできます。
継続的な努力と体制が必要
故障や老朽化については、なるべく発生させない努力と故障発生時の影響を最小限に抑える努力をする必要があります。
故障を発生させないためには日常的な予防保全活動が非常に重要です。予防保全活動とは、毎日掃除やメンテナンスをしたり、異音が発生していないか確認したりする活動です。この予防保全活動がトラブルの発生を未然に防ぎ、スムーズな現場運営につながります。
また、故障発生時の影響を最小限に抑えるためには、迅速な状況把握と対処方針の決定、つまりクイックな一次対応が鍵を握ります。感知や対応が遅れれば遅れるほど、現場運営に対する影響範囲が大きくなってしまいます。そうならないように、トラブルが発生したらすぐに駆けつけて対処する体制構築が重要です。
内製化して自社で保守部隊を持つケース、メーカーさんに常駐保守を依頼するケースが代表的です。そこまでの体制を整えられない場合は、チョコ停に分類されるような小さなトラブルは自社で対応し、大きなトラブルやシステム的に確認しないといけないようなトラブルはメーカーさんを頼る、という切り分けを目指されるのが良いのではないでしょうか。
以下の記事では、AGVを例に保守について詳しく解説しています。
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移転の可能性があるなら固定しないタイプの設備を
移転時に重荷になるデメリットに対しては、基本的に移転はしない前提で考えておきましょう。将来的な移転を現時点では判断しきれない場合は、持っていきやすい自動化設備を選定すると良いですね。
たとえばAGVやAMRのような、固定せずに使うタイプの設備であれば比較的移動させやすいといえます。移転を想定する場合の自動化においては、良い選択肢となるでしょう。
物流倉庫を自動化する設備・ロボットの種類
一口に自動化設備といっても、ピッキング作業の歩行を代替するものや仕分け作業の正確性をサポートするロボットなど、さまざまな問題を解決する設備やロボットがあります。
どれも単に一つの作業を自動化するソリューションではありません。「人との協働を考えた上でどうしたら効率的に作業ができるのか」「従業員の負担を減らせるのか」といった視点に考慮されたロボットの普及が進んでいます。ここでは自動化設備・ロボットの種類と機能、導入メリットを紹介します。
搬送:AGV(無人搬送車)
AGV(Automatic Guided Vehicle)とは、指定されたロケーションまで、自動でものを搬送するロボットを指します。小さい部品やコンテナなど、運ぶものによってロボットのサイズも異なります。
物流センターで見かけるサイズのAGVだと、だいたい最大積載量800〜1,000kgまで対応でき、1.0m〜1.8m/秒で搬送します。
また、AGVのナビゲーション方法は床に設置された磁気テープやQRコードをたどるタイプと、センサーでルートをロボットが判断するSLAM(自律走行)タイプがあります。どちらの場合であっても、省人化によるコスト削減やスタッフの負担軽減、ヒューマンエラーの防止効果が期待できます。
搬送:AMR(自律走行搬送ロボット)
AMR(Autonomous Mobile Robot)とは、AIやセンサーで人や障害物を回避しながら、指定された場所まで自律移動するロボットのことです。AGVと似た言葉の響きなので、同じような働きをするのかな?と思われるかもしれませんが、AMRは人と作業エリアを共有して協働するロボットです。
スペック面でみると、45kg〜50kgの荷物を積んだ搬送作業を1.5m〜2.0m/秒で実行するSLAM(自律走行)タイプのAMRが平均的です。AGVと比較すると搬送重量で劣っています。
一方でAMRを選択する大きなメリットは、通路幅を90cmを確保できれば、現状のレイアウトと棚のまま導入ができる点です。現場を一周するだけでマッピングができるので、棚の追加や繁忙期と閑散期の棚割変更など、レイアウト変更にも柔軟に対応可能です。
AGVの導入では倉庫全体のレイアウト変更が必要になる場合があり、ロボット本体以外で専用棚の購入などの導入コストが生じるケースもあります。
仕分け:DAS(デジタルアソートシステム)
DAS(Digital Assort System)とは、手元に来た商品の仕分け先を、表示器を使って指示するシステムのことです。まずピッキングされた商品をハンディーターミナルなどでバーコードスキャンします。すると仕分け先のランプが点滅するので、作業スタッフは表示器に従って仕分けるだけで作業が完了します。
従来の仕分け作業はリストを片手に仕分け先を探していたため、時間がかかるだけでなく、その場でミスに気づけずに検品で発覚するような作業工程でした。DAS導入はヒューマンエラーの改善につながり、作業効率と生産性の向上を図れるメリットがあります。
仕分け:GAS(ゲートアソートシステム)
また、DASと似た響きのGAS(Gate Assort System)という仕組みも昨今導入する現場が増えてきている印象です。GASは仕分け先の間口に入れ間違いを防止する目的の蓋のようなもの(ゲート)が付いており、商品情報を読み取ると仕分け先のゲートだけが開きます。
ゲートの開閉で仕分け先がわかるので、DASと比較するとさらに入れ間違いが起きにくく、正確性がより求められる作業にフィットする仕組みになっています。
ピッキング:ピースピッキングロボット
ピースピッキングロボットとは、複数の商品が混ざったコンテナの中から必要な商品をピッキングし、オーダー別のコンテナやピースコンベヤへ供給するロボットです。
物流現場のピッキング作業はサイズも素材もバラバラの商品を扱うので、自動化するためには柔軟に商品をピッキングできるロボット開発が課題となっていました。そこで登場したのが従来の座標をティーチングするタイプではなく、目で見て判断するロボットです。ビジョン強化とAIシステムの搭載によって、ロボットが手元に来た商品を3Dで認識し、ピッキング方法を判断する作業が可能になりました。
ピッキング作業は注文数が増えるほどに多くの人の手を必要とし、ミスも起こりがちです。ピースピッキングロボットを導入すれば、ピッキング作業の効率化や省人化、出荷作業のクオリティ向上が期待できます。
物流倉庫を自動化する10の手順
では、物流倉庫の自動化はどのように進めていけば良いのでしょうか。大きく10の手順に分けて解説します。
手順1.目的整理
自動化に際して、まずは目的の把握と明確化が必要です。例えば、属人的な業務の排除、省力化、効率化、コスト削減などが挙げられます。ビジネスの拡大や将来の環境変化に備えるといった側面もあるでしょう。
目的は関係する部署やステークホルダーによっても、部分最適か全体最適なのか異なる場合があります。例えば、物流倉庫の限られた一部の工程を自動化し最適化するのか、あるいは倉庫全体のオペレーションを自動化するのか、対象と範囲によって目的が大きく異なります。そのため、関係者間で十分な目的のすり合わせが必要です。
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手順2.現状把握
現行の運用、稼働状況、スループット(単位時間あたりの処理量)やボトルネックとなっている箇所を把握します。
工程や工数ごとに要素分解を行い、所要時間や動線の長短、ムダの有無や必要な作業人数、作業上のリスクなどを把握します。また、どのような経緯で今の仕組みに至ったのか、現在の外部や内部環境との乖離、将来目指したい仕組みも確認すると良いでしょう。現状把握は担当部署や担当者のヒアリングだけでなく、実際に現場に足を運び、自らの目で確かめることも必要です。
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手順3.リサーチ
現状把握をした後、課題を解決する方法についてリサーチを進めます。
課題解決のツールとなりうる物流機器、ロボット等のマテハンについて、ベンダーへ問い合わせ資料請求を行います。また、実際にベンダーのデモを見学することも必要です。
実際にマテハンを導入した他社の見学も参考になります。同様の導入事例を見学することで、自社のシステム構築のイメージを立てやすくなります。また、他社のシステムをベンチマークにすることができます。
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手順4.提案依頼、見積精査、稟議、ベンダー確定
リサーチの次は、ベンダーに対するRFP(Request For Proposal:提案依頼書)の作成です。RFPをベンダーに送付し、提出された提案書を精査します。
この際、相場観を知っておくと、ニーズに合わない提案や提案金額を除外できます。提案書はさまざまな観点から精査します。見積は初期費用だけでなく、月額のランニングコストやトラブル時の対応費用、スポット費用などについてもトータルで確認します。その際、複数のベンダーの提案を、同一指標で比較することが大切です。
見かけの安さだけに囚われると結果的にコストアップとなってしまう場合もあります。十分に比較検討し、課題解決とROI(Return on investment:投資に対する効果)を実現できる提案を採用しましょう。その後、社内稟議を通し、ベンダーを確定します。
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手順5.要件定義(As-is To-be整理)
現状把握の結果をもとに「As-is」をまとめます。「As-is」とは現状、現在の姿を意味します。続いて、あるべき姿や達成したい目的、課題解決を「To-be」として要件定義します。
「To-be」設定の際は、ビジネスの成長率や、想定される新たなサービス、将来的な業務量の増加も考慮します。これらは新規に導入するシステムの対応余力や拡張性の必要有無を判断する時にも役立ちます。
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手順6.基本設計
基本設計では、前工程の要件定義において抽出した要件を機能単位に分割します。
それぞれの機能が「何を実現するのか」「機能同士がどうつながるのか」を整理し、システムの全体像を構築します。基本設計は目的達成の仕組みを構築する、重要なプロセスです。
手順7.製造・調達
ベンダーから導入するシステムの調達を行います。
カスタマイズや自社の要件に合わせた最適化が必要な場合は、製造・調達のリードタイムを長く設定しなくてはならないことも。海外から調達する際は、コロナの感染拡大によって輸入が大幅に遅延したケースもあります。全体の導入スケジュールへの影響も考慮しましょう。
手順8.据付工事、テスト
新システムの導入や据付工事に際しては、現行の運用体制への影響を最小化するようにします。
また、新システムへ移行時に問題が発生した場合、現行の運用体制に戻れるようにしておくことも重要です。移行前にスモールスケールでのテストを行っておくのも良いでしょう。実際に現場に導入してみると、設計段階とは異なる点も発生します。現場スタッフと自動化機器の接触事故の可能性など、リスクの確認も必要です。
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手順9.トレーニング
ユーザー目線でマニュアルを作成します。
現場スタッフの理解レベルは様々です。日本国籍だけでなく、外国籍の方もいるかもしれません。誰が運用しても同じ結果がアウトプットされるような内容が求められます。
トレーニングの時間も複数の時間帯を設定し、スタッフが抜け漏れなく受けられるように配慮すると良いでしょう。現場のスタッフが対応できなければ、コストをかけて自動化を導入しても効果が薄くなります。
手順10.稼働開始
新しい仕組みの導入後は、安定稼働を目指します。定期的なレビューを行い、想定した効果や省力化、効率化ができているかモニターします。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し可視化できると、改善点も把握しやすくなります。導入後の評価については、定量的な数値的な側面だけでなく、現場の声や体感など定性的な面も含めて両面から行うと良いでしょう。
物流倉庫の自動化事例
では、最後に物流倉庫の自動化事例をチェックしましょう。
事例1.アマゾンの自動化
アマゾンは、いち早く物流倉庫の自動化に注力した企業です。中でも、黄色の棚を持ち上げて搬送するAGVは多くのメディアに取り上げられています。このAGVは2012年にアマゾンが買収した「Kiva Systems(キバシステムズ)」が「Amazon Robotics(アマゾンロボティクス)」として、開発したSLAMタイプのロボットです。
AGVは、従業員が配置されている「ステーション」と呼ばれる場所まで棚を搬送します。ステーションでは、カメラや二次元コードを利用して、正確なピッキングができる仕組みが構築されているのも特徴です。
米アマゾンでは、個々の商品を認識しながら仕分けするロボットアームの試験稼働も始まっています。創業以来最大規模の解雇が実施され、コスト削減と労働環境の改善を実現している事例です。
事例2.アスクルの自動化
アスクルでは、Mujin社のデパレタイズロボットとギークプラス社の自動棚搬送ロボット「EVE P800R(AGV)」、「PopPick」を導入しています。
Mujin社のデパレタイズロボットは、ケース商品をロボットアームでピッキングし、コンベヤに投入するロボットです。
ギークプラス社のEVE P800R(AGV)は、アマゾンと同様、従業員のもとまで棚を搬送するためのAGVです。さらに最新の自動搬送システムである「PopPick」は、3.8mの棚に収納された折りたたみコンテナを搬送するソリューションです。保管効率は従来の約2倍。自動で、出荷対象の商品が入ったコンテナを棚から取り出すため、生産性も向上する見通しと発表されています。
物流を自動化した企業の事例については以下の記事で、さらに詳しく考察しています。
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物流倉庫の自動化にお悩みの方は、CAPESにご相談ください
物流倉庫の自動化は多くのメリットがありますが、デメリットも考慮しながら導入を検討する必要があります。さまざまな自動化設備やロボットから、自社にあったソリューションを選ぶためには、目的整理から始めると良いでしょう。先駆けて物流倉庫の自動化に成功している事例を参考にすることも有効です。
一方で、初めて自動化に取り組む際は、社内の知見が不足する傾向があります。大きな投資になるため、失敗できない不安がついてまわるでしょう。当社CAPESは、そうした不安に寄り添う「物流コンサルティングサービス」と物流自動化を推進する「物流企画人材育成事業」を提供しております。お気軽にご相談ください。
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執筆者
田中 なお
物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。倉庫の現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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監修者
西尾 浩紀
大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハン設備を多数導入した国内最大規模の9万㎡の平屋建て物流センター立ち上げプロジェクトのマネージャーとして、業務プロセス設計から、総務・労務業務設計やスタッフ採用計画に至るまでの多岐に亘る業務設計をリード。センター稼働後はセンター長としてセンターマネジメントを実施。2018年株式会社CAPES設立。スタートアップから中小、大企業まで企業規模・ステージを問わず幅広く対応してきた実績を有する。特に自動化設備の導入・運用に関する豊富な知見を有し、EC物流の構築、物流センターの立ち上げ支援を得意とする。