HOW TO
自動化を知る
物流会社で自動化する際の考え方!目的やリスク、費用負担を解説
市場の状況
物流DXや自動化への関心は高まっているものの、まだまだ一般的とはいい難いのが現状です。一方で政府のKPIでは、物流DXを実現している物流会社を2025年には70%まで引き上げると掲げています。
そうはいっても、「どう進めていけばいいのか、わからない」と感じている物流会社や荷主企業の従事者もいらっしゃるのではないでしょうか。
結論からいえば、荷主企業が投資に積極的にならなければ、物流会社は自動化を進めづらい側面があるといえます。
この記事では、物流会社における自動化設備導入の考え方について、目的や導入リスク、費用負担の考え方などを解説します。自動化を検討するきっかけとして、参考になさってください。
目次
物流の自動化を推進する意義・目的
物流の自動化を推進する意義としてよく挙げられる理由が、今後加速する「人手不足」です。ではこの人手不足に対して、なぜ自動化を進めるべきなのでしょうか。深掘りして考えてみましょう。
時給高騰への対応策
「コストを下げる」のではなく「コストをこれ以上あげない」ための対策として、自動化を進める企業が多いと感じています。
今後、人手不足が加速するにつれて人を雇うためのコストは上昇していくでしょう。今は時給1,000円でスタッフが集まっているとしても、1,100円、1,200円……と時給を上げなければスタッフが集まらなくなる可能性が高いといえます。必ずしも効率化を目指すのではなく、コスト上昇を抑えるといった考え方もあると覚えておきましょう。
コストの抑制
物流の自動化に成功すれば、作業に必要な人数が減少します。
たとえばスタッフを100人から50人に削減できたとしましょう。教育、採用や社会保険料の負担を考えれば、50人のスタッフを雇用するために必要とするコストは小さくありません。削減できた50人分のコストで自動化設備の投資回収が可能です。
物流を委託している荷主企業においては、作業にかかる時間から逆算し、作業料を算出し直すといった合理的な値下げ交渉ができるでしょう。
物流の自動化を阻むリスク
物流の自動化を阻むリスクもあります。一番大きなリスクとして考えられるのは、投資回収が計画どおりに進まないことです。さまざまな要因により、想定している生産性を下回ってしまうケースがあります。何の対策も施さなければ、投資回収にかかる期間はおのずと長くなっていくでしょう。
また投資する企業を物流会社側と荷主企業側に分けて考えたときに想定できるリスクもあります。特に在庫量や出荷量を参考に設計するような大規模な自動化設備には、ここで紹介するリスクへの考慮が必要です。リスクを理解したうえで自動化を検討しましょう。
物流会社が自動化に投資するリスク
物流会社が自動化設備に投資する場合、特定の荷主に対して物流を自動化するのはリスクが伴います。
個別の運用にあわせて自動化設備を準備したばかりに、荷主との契約終了後、次の使い道が見いだせなくなってしまう可能性があるからです。償却期間をまかなえないような短期契約は避けなければなりません。
リスクを避けるのであれば、汎用性の高い自動化設備を選択するか、オペレーションを標準化する工夫が考えられます。
荷主企業が自動化に投資するリスク
荷主企業が自動化設備に投資する場合、物流拠点を移動しづらくなるリスクがあります。
特に売り上げが成長中の荷主企業においては、物流拠点を新設・統廃合する可能性が残っているでしょう。物量の拡大に伴い、保管や出荷のキャパシティーを拡張する必要が出たり、リードタイムや輸送費を考慮して再配置を考えたりする企業が少なくないからです。
先々を見据え、移動の必要がない拠点であれば、大規模な自動化設備を検討しやすいともいえます。
物流会社が自動化設備へ投資する際の考え方
弊社が物流コンサルティングをする中で現状として、投資に踏み切るのは荷主企業が多い印象です。一方で一部の物流会社でも投資に踏み切るケースが出てきています。
荷主企業と比較してリスクが高いともいえる物流会社の自動化ですが、どのような考え方を持って進めているのでしょうか。大きく分けて2つのケースがあります。
複数荷主に活用する
ひとつは特定の荷主企業ではなく、複数の荷主企業のために自動化設備を購入するケースです。
ロジスティード社の「ECスマートウエアハウス」や佐川急便社の「Xフロンティア」といったECプラットフォームセンターがその代表例です。基本的に荷主ごとの個別運用をせず、標準オペレーションで対応するため、自動化設備を効率的に活かせます。
荷主企業へ自動化を進める企業として存在感をアピールする
もうひとつは荷主企業へのアピールとして購入するケースです。みずから自動化に取り組む知見の高い企業としてその存在感をPRできます。
こうしたケースでは、さまざまな荷主企業に転用できるAMR(自律走行搬送ロボット)が導入しやすいでしょう。まだ事例が少ない中、小規模からでも自動化を進めることで、メディアへの露出機会を獲得できる可能性もあります。
物流会社に自動化設備を導入する際のアプローチ
自動化設備を導入する際は荷主企業と物流会社の合意が必要です。
生産性が上がった場合の作業料についても話し合っておきましょう。
自動化設備を購入する企業主導でメーカーを選定します。以下の記事も参考にしてみてください。
メーカーと荷主企業、物流会社で要件定義を進めていきましょう。キックオフミーティングについて詳しく解説している記事もあわせてご覧ください。
物流会社も、委託している荷主企業も物流を自動化できる!
物流を自動化するソリューションは、月額制で利用できるモデルの登場により資金的なハードルが下がりつつあります。とはいえ導入するには労力がかかるため、自動化へのハードルは依然として高いともいえるでしょう。
しかし物流会社であっても、物流業務を委託している荷主企業であっても、条件が揃えば自動化を進めることは十分に可能です。
ただし物流会社主導で投資をする場合は、特定の荷主企業をフル装備で自動化するハードルがさらに高くなります。荷主企業から物流会社に「投資してほしい」と要望したところで、なかなか実現しないかもしれません。
荷主企業においては、状況次第で自社購入も検討してみてください。また昨今では、複数荷主企業に対して活用できる自動化設備も増えています。
物流会社においては、取り入れやすい小規模な自動化から始めていきましょう。
<関連記事>