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導入を検討する
AGVと自動倉庫を比較!市場規模から見る需要の変化も解説
機種選定
AGV(無人搬送車)は用途によって、自動倉庫と似たような働きをします。AGVが作業者のもとまで商品を運び、作業者は歩くことなく商品をピックアップするといった使い方です。AGVの中でもGTP型の棚搬送ロボットが該当します。
つまりAGVと自動倉庫は、自動化設備の導入を検討する際に比較対象になりえるのです。いずれも購入して実稼働が始まれば、簡単には運用をやめられません。
当記事では、選定基準の要素ごとにソリューションを比較したうえで、AGVと自動倉庫の現状とソリューションの選定方法を解説します。自社の意向に沿って失敗のない機種選定ができるようにお役立てください。
目次
AGVと自動倉庫の比較
まずはAGVと自動倉庫を比較してみましょう。
以下は、選定の基準となる要素を比べて評価した表です。詳細を解説します。
費用
費用は自動倉庫と比較してAGVの方が安価です。自動倉庫はアンカー設置を伴う大がかりな工事が必要になるため、導入費用が高額になります。
一方で、AGVだけを見れば購入費用は決して安価とはいいがたいものの、月額制のレンタルモデルも展開され始めています。少しずつ手に取りやすい形に変わってきているといえるでしょう。
保管効率
保管効率の良さは、AGVより自動倉庫の方が優れています。自動倉庫は、天井高を保管スペースとして十分に活かせるからです。その一方、AGVは棚を含めて下から約2.5m程度。保管効率の視点では、天井までの残りの高さが無駄になってしまう特徴があります。
物流センターの標準スペックは天井高5.5m以上のため、単純計算でも2倍ほど保管効率の差がつくことがわかります。
作業効率
AGVと自動倉庫の作業効率や生産性は、ほぼ同等です。
トラブル時の影響範囲
トラブル時の影響は、自動倉庫と比較してAGVの方が軽微に済みます。AGVはロボット単体で故障するため、故障したロボットを取り除いてしまえば運用を再開できます。一方で、自動倉庫はユニットごと故障してしまうため、容易には復旧できず、作業を止めなければなりません。
拡張性
拡張性は、自動倉庫よりAGVの方が高い傾向にあります。AGVはロボット1台単位で購入可能なため、物量の増加に合わせて能力を拡大できます。それに対し、自動倉庫はユニットごと購入しなければならない商品がほとんどです。物量の伸びに対応して、少しずつ能力を拡大するような拡張ができません。拡張のハードルに差があります。
荷姿の許容度
荷姿の許容度はサイズ・形状ともにAGVの方が自動倉庫に勝っています。AGVは、棚の間口を小さく区切って小物を入れたり、大きめなケースをそのまま積載したりと荷姿に対し柔軟に対応できるからです。
一方で自動倉庫の場合、保管できる商品のサイズ・形状はコンテナサイズに依存します。パレット型自動倉庫の場合も、パレットに積み重ねて積載できるようなケース商品に限定されるでしょう。
AGVと自動倉庫市場規模|導入の現状
矢野経済研究所の「2022年版 物流ロボティクス市場の現状と将来展望」によると、2021年度実績ベースでは「ピッキングロボット」の市場規模が「保管に関わるロボット」を上回っています。他方、今後は「保管に関わるロボット」の需要が伸びていくと予測されているのも特徴です。
この調査では、「ピッキングロボット」にGTP型AGVのほか、ピッキングアシストAMRや無人でピースピッキングができるロボットも含んでいるため、厳密にAGVと自動倉庫の比較はできません。しかしそれらを含んでいてもなお、「保管に関わるロボット」つまり自動倉庫の需要が同等程度まで伸びていくとされているのです。
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自動倉庫が注目される理由
自動倉庫が注目される背景には、以下3つの理由があると考えられます。
AGVの初期ユーザーが保管効率に課題感を持ち始めた
AGVは、特に2010年代後半からトレンドになり国内で普及が進みました。2023年現在、初期ユーザーは5年以上にわたってAGVを利用している現状にあります。そうした状況下で、AGVが苦手とする上部空間の活用に課題感を持つ企業が出てきています。
物流コストの上昇に伴い保管効率の重要性が増している
さらに外的要因の変化も大きいといえるでしょう。燃料費、人件費、建築資材費など物流に関わるさまざまなコストが高騰しています。その影響を受けて、保管効率の重要性が増しているのです。すでに物流の自動化にチャレンジしている企業が拠点の拡大をする際に、自動倉庫を選択肢とする動きが見られます。
自動倉庫の技術革新が進んでいる
技術革新が加速していることも、自動倉庫が注目される理由として挙げられます。従来のスタッカークレーン式と呼ばれる自動倉庫は、縦方向と横方向の動きが限定されており、かつ通路が必要な仕組みでした。いわば、フォークリフトが通路を走行し、商品を取りにいく動きと大きく変わりありません。
最新のソリューションでは、自動倉庫内でコンテナが縦横無尽に走ります。加えて、通路を必要も必要としないため、作業効率、保管効率が共に向上。技術革新が物流の自動化を検討する人の興味関心を高めているといえるでしょう。
AGVと自動倉庫型、選ぶならどっち?
では結論として、AGVと自動倉庫ではどちらがよいのでしょうか。
例えば、「自動化の効果を検証したい」といった段階にある場合は、月額制でレンタルできるAGVが選択肢に挙がるでしょう。初期費用を抑えられることはもちろん、万が一費用対効果に満足できない場合は、運用をもとに戻すことも可能です。
一方で料金体系にこだわらず、予算を確保できるのであれば、保管効率を追求できる自動倉庫が選択肢に挙がります。多品種小ロットの商品を扱うオペレーションにも、効果を発揮するでしょう。
一概にどちらがよいとはいえませんが、重要視する項目から機種選定を進めてみてください。
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さまざまな視点からAGVと自動倉庫を検討し、選定しよう
GTP型のAGVと自動倉庫は似た役割を担うものの、細かく比較すれば強みに違いがあるとわかります。その中でも、予算は大きな判断軸になるでしょう。
生産性は稼働してみて初めて実際の数値がわかる側面もありますが、保管効率に関しては机上の計算でもある程度正確な効果を予測できるはずです。
じっくり検討してみてください。
当社CAPESは、物流コンサルティング事業を行なっています。自動化設備導入の進め方などにお悩みの方を対象に、オンライン面談でカジュアルに壁打ち役を務めるお手軽物流相談サービスも展開していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。