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高度物流人材の人材育成をわかりやすく解説!必要なスキルとプログラム
人材育成
物流業界では、昨今の環境変化により人材育成の重要性が高まっています。物流のDXや自動化の推進を発端に、物流企業や荷主企業の物流部門に必要なスキルが多様化しているからです。社内の知見不足や人材育成のリソース不足に課題感を持つ企業は少なくないでしょう。
本記事では、物流の人材育成が重要視される背景から、今後の物流業界に求められる「高度物流人材」が持つべきスキル、人材育成を始める手順、カリキュラムの例を紹介します。
目次
物流の人材育成が重要視される背景
物流業界の人材育成が重要視される背景には、物流の2024年問題や少子高齢化、それらに伴う人手不足があります。次の図では、令和3年の実績ベースで65歳以上の人口が、総人口の28.9%を占めていることが分かるでしょう。令和47年には、さらに高齢化が進み約4割が65歳以上になると予想されており、現状のままでは労働人口が不足する未来は明らかです。
従来の物流業界では、多くの働き手がいる前提のもと、アナログな業務や力仕事が一般的でした。右から左にモノを移動させるだけで物流が成立した時代から、環境が一変しつつあります。ますます加速する人手不足に対応するには、システムや設備の力に頼らざるを得ません。
ところが物流現場の管理をしてきた人材が、システムや設備のスムーズな導入や活用ができるスキルをもっているとは限りません。
こうした人材、スキルを育てるために、物流業界では人材育成が重要視されているのです。
今後の物流業界で求められる高度物流人材とは
ここでは今後の物流に求められる「高度物流人材」について、順を追って解説します。
物流業界に必要な人材
物流に必要な人材の属性は、大きく2種類に分けられると考えます。
まずは、これまでも活躍してきた物流センターのセンター長など、当日の作業を完遂させる能力に長けた現場管理の人材です。日々の進捗管理や工程管理を行います。
次に「高度物流人材」として、特に育成が必要とされている企画・プロジェクトを推進する人材です。物流センターの立ち上げ、コストダウンへの施策策定、それらに伴うシステム・設備の導入などのプロジェクトに携わります。
高度物流人材に必要な具体的スキル
高度物流人材には、付加価値を創出するスキルが求められます。付加価値とは、一般的にサービスや商品に付加される特別な価値を意味しますが、ビジネスの観点では粗利益を指す場合もあります。つまりサービスの向上だけでなく、労働生産性の向上も付加価値の創出に含まれるのです。
例えば、労働生産性を高めるために物流のDXや自動化を進める場合は、プロジェクト・マネジメント能力を持つ人材が必須です。具体的には次のような役割を円滑に進める能力が挙げられます。
・メーカーとのコミュニケーション
・プロジェクトのスケジュール管理・タスク管理
・部門や企業を横断するステークホルダーのマネジメント
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またデータを活用する能力も重要です。現状の生産性を把握し、導入するシステムや設備やを使用した時の生産性と比較。投資額を何年で回収できるのか判断し、メーカーやソリューションを選定します。
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こうした企画を進めるうえで、サプライチェーンの全体を俯瞰する視点や、社会の変化を把握して課題を見つける能力、異業種と連携できるコミュニケーションスキルも不可欠です。
人材育成のフロー4ステップ
では、次に人材育成のフローを確認しましょう。
1.目標を定義する
まずはいつまでに、どんなスキルを取得すべきか定義します。
物流部に配属されて1〜2年目、中堅、リーダーといった階層分けをして、その階層ごとにどんなスキルを持っているべきか、そのためには何を学ぶべきか、目標を明確に整理しましょう。評価制度や人事制度の物流バージョンとイメージしてみてください。
例えば1〜2年目の人材には、現場理解を目的として「物流現場の基礎知識を学んでほしい」。中堅には、リーダーへのステップとして、「会議のファシリテーションやドキュメンテーションのスキルを向上してほしい」。リーダーには、物流センターの立ち上げをリードして欲しいので、「物流におけるプロジェクト・マネジメントを学んでほしい」などが考えられます。
加えて「要件定義の進め方がわからない」「マテハンやコンサル企業の選び方がわからない」など企業ごとの課題に沿った研修を設定することも有用です。
2.研修の手法、予算を決定する
次に研修の方法と担当者を決定します。
・オンライン研修/集合研修
・外部研修/社内研修
社内で研修をするのであれば、担当する講師を選任しなければなりません。目標や課題に対し、社内に知見のある人材がいない場合は外部にお願いすると良いでしょう。そして研修の手法に紐付いて、予算を決定します。
3.コンテンツを作成する
次にコンテンツの作成です。社内研修であれば、カリキュラムを作成しましょう。
外部に研修をお願いする場合は、研修対象の人数、要件、時期を情報として提供のうえ、見積もりの作成を依頼しましょう。既存の研修を活用するほか、課題に合わせたオリジナルの研修作成も可能です。
4.研修と実践
研修を実施します。その後、現場での実践により、振り返りをしましょう。
CAPESの物流企画人材育成事業
高度物流人材を育てるための知識やリソースの不足は、多くの企業が抱える課題です。
ここからは、当社CAPESが提供する物流企画人材育成事業を紹介します。目的ごとにプログラムを用意していますので、ご参考になさってください。
庫内作業自動化推進 人材育成
企業ごとのニーズに沿ってカリキュラムを作成する物流の人材育成プログラムです。物流現場のDXや自動化を推進する企業のうち、経験者が社内にいないため人を育てたいと考える企業を対象に必要なスキルを身につけるための知識を体系化して、提供しています。
「今、どのような状態にある人たちが、いつまでにどうなって欲しいか」という期待値などのヒアリング、現場視察を経て、個別のカリキュラムを作成します。
物流基礎講座
物流基礎講座は物流業界の初心者向けに提供する人材育成プログラムです。
具体的には次のような方を対象者と想定しています。
・物流業界に参入した新卒新入社員
・他業種から物流業界への転職者
・物流業界へソリューションを提供する企業/物流不動産を提供している企業に属しているけれども、現場のことがわからない方
「トータルピッキング・シングルピッキング、それぞれの特徴」のような物流用語の理解から始まり、それぞれの現場に適したピッキング方法など物流現場で必要な基礎知識を学べます。
また物流業界の主要なプレイヤーや、旬のテクノロジー・ソリューションといった最新の情報も共有。座学を中心に、現場視察も行います。
物流プロジェクトマネジメント講座
物流プロジェクトマネジメント講座では、明確な期日までに目標達成を目指す、プロジェクト型の仕事を完遂する能力を養います。
例えば、コスト削減やシステムの導入、物流センター立ち上げなどのプロジェクトに対応するために必要な能力、対応の仕方を学びます。
アカデミー事業
アカデミー事業は、主に繋がり作りを目的として、ディスカッションを通じてお互いに学び合う場を提供しています。
これまでのアカデミー事業では「物流の未来について」、「自社の物流現場について」などのテーマで、相互にプレゼンテーションを行い交流を図ってきました。
アカデミーに参加するのは、利害関係のない3PL企業や荷主企業です。他社との交流は横の繋がりが増えるだけでなく、自社の取り組みへ応用できる知識を得られるチャンスです。「どんな提案が刺さるか」といった会話が飛び出すこともあり、自社を客観視できる力や業界を俯瞰してみる力が養えます。
メンタリングサービス
物流に関わる若手人材のメンターとして、客観的な立場でサポートするサービスです。1on1ミーティングを通じて、解を与えるのではなく、解を導く役割を担います。
期待をかけている若手人材がいるものの、教育に時間を割けないといった企業の課題をクリアにします。他の研修より、個別の業務やプロジェクトを進めるうえでの壁打ち相手になる要素が強いサービスです。
若手人材の上司に当たる方とも面談の場を設け、フィードバックを行います。
気になる人材育成プログラムがありましたら、お気軽にご相談ください。
人手不足を乗り越えるために物流の人材育成を進めよう!
物流業界が人手不足を乗り越えるためにも、人材育成は急務といえます。
業務に携わりながら体で覚えるOJT(on the job training)のほかに、研修を通じて関連する知識を体系的に学んだり、他社と交流したりする機会を設けたりすることは人材育成に有用です。
必要に応じて社内研修・社外研修を検討しましょう。高度物流人材の育成は物流の新たな価値の創出に繋がっていくはずです。
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執筆者
田中 なお
物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。倉庫の現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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監修者
西尾 浩紀
大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハン設備を多数導入した国内最大規模の9万㎡の平屋建て物流センター立ち上げプロジェクトのマネージャーとして、業務プロセス設計から、総務・労務業務設計やスタッフ採用計画に至るまでの多岐に亘る業務設計をリード。センター稼働後はセンター長としてセンターマネジメントを実施。2018年株式会社CAPES設立。スタートアップから中小、大企業まで企業規模・ステージを問わず幅広く対応してきた実績を有する。特に自動化設備の導入・運用に関する豊富な知見を有し、EC物流の構築、物流センターの立ち上げ支援を得意とする。