HOW TO
自動化を知る
TCとDCってどう違う?物流センターをアップデートする自動化のヒント
ロボットの種類
物流業界では、労働力不足や輸配送力不足といった深刻な課題が顕在化しています。特に、EC(電子商取引)の拡大や消費者の「即日配送」へのニーズ高まり、トラックの荷待ち問題などにより、従来のオペレーション手法だけでは対応が難しくなっているのが現状です。このような状況を打開する手段として、物流センターの自動化が加速しています。物流センターはTCとDCに分類できるため、自動化ソリューションを選択する際にも、それぞれの役割や物流機能を意識することが有効です。まずは両者の違いを明らかにし、その上でどのような自動化ソリューションを導入すれば、最適なパフォーマンスを得られるかを検討していきましょう。各ソリューションの取り扱い企業へのリンクも設置していますので、ブックマークしてご活用ください。
目次
TCとDCにおける役割の違い|物流センターの種類
物流センターは、役割や担う物流機能に応じてTCとDCに分類できます。TCとDCの違いは、以下の通りです。

TC(トランスファーセンター)の特徴
TC(トランスファーセンター)とは、「仕分け・中継」機能に特化している物流センターを指します。
TCの役割
通過型物流センターと例えられるTC型の物流センターは、メーカーから入荷した商品を方面別や店舗別などで分別し、すみやかに各拠点へ送り出す役割を担います。基本的にTCでは、長期の在庫保管は行いません。
複数店舗を持つスーパーマーケット・ホームセンターなどの大手量販店やコンビニなどの物流網によく見られる物流センターです。多品種小ロットの商品を扱う傾向があります。
TCの業務の流れ
TCでは、次のような流れで業務を行います。
1.入荷・検品
2.仕分け
3.梱包
4.出荷
例えば、1台のトラックでメーカーから商品100個を入荷したとしましょう。TCでは商品を入荷・検品次第、スーパーマーケット10店舗分に仕分けします。この仕分けられた商品を各店舗に向かうトラックが集荷し、それぞれ配送することで効率化が実現します。
DC(ディストリビューションセンター)の特徴
DC(ディストリビューションセンター)とは、在庫の保管と管理を伴い、入出荷を行う物流センターのことです。
DCの役割
保管型物流センターとも例えられるDC型の物流センターでは、需要予測に基づいて一定量の在庫を保管し、注文に応じてピッキングや梱包、出荷といった工程を担います。
メーカー、卸、小売などの商品や原料などの保管拠点として利用され、在庫は長期にわたって保管されるケースもあります。
DCの業務の流れ
DCでは、次のような流れで業務を行います。
1.入荷・検品
2.棚入れ・保管
3.(流通加工)
4.ピッキング
5.出荷・検品・梱包
例えば、生産された製品を工場から入荷し、検品、棚入れ後、しばらくの間保管します。保管期間にラベル貼りやタグ付けなどの流通加工を施す場合もあるでしょう。注文に応じて商品を棚からピッキングし、検品・梱包のうえ、出荷します。
こうした機能面の違いに合わせて、自動化設備を「どの工程に」「どの程度導入するか」を検討することが、物流現場の効率化に直結する鍵となります。ではTCとDCでは、それぞれどのような自動化ソリューションを検討すればよいのでしょうか。
TCにおすすめの自動化ソリューション
TCでは、商品の入荷後、即日もしくは短時間で商品を出荷しなければなりません。自動化を検討する際は、仕分け処理能力のスピードと精度の向上を重視するとよいでしょう。リードタイムの短縮とヒューマンエラーの削減が見込めます。
設置スペース、商品のサイズ・重量、仕分け能力、仕分け数に考慮して検討します。
以下は、仕分け作業にかかわる代表的なソリューションです。
・コンベアタイプのソーター
・ロボットタイプのソーター
・DAS(Digital Assort System)
・GAS(Gate Assort System)
ここでは例示したソリューションの仕組みを解説し、各ソリューションを取り扱う企業を紹介します。各企業のリンクから商品を確認できますので、あわせてチェックしてみてください。
コンベアタイプのソーター
コンベアタイプのソーターは、ベルトコンベアで商品を搬送し、自動仕分けする機器です。
ベルトコンベアを設置する面積が必要になるため、比較的大規模な自動化に向いています。大物や重量物まで対応できる機種もあり、大量のモノをスピード感を持って仕分けられることが特徴です。
ベルトコンベアの形状や仕分けの仕方によって、細かな様式が異なります。
・スライドシュー式
・クロスベルト式等
取扱企業例
・フィブイントラロジスティクス
・ホクショー
・ダイフク
ロボットタイプのソーター
ロボットタイプのソーターは、商品を自動で仕分けするロボットです。
仕分けのスピード感はコンベアタイプに劣りますが、人間の処理スピードより早く、比較的省スペースで導入可能で小規模な倉庫でも自動化を始めやすい特徴があります。少量、かつピース〜小さめのケースの仕分けに向いています。
代表的なロボットタイプのソーターは以下の2種類です。
・立体型仕分けロボット
・平面型仕分けロボット等
取扱企業例
・プラスオートメーション
・Gaussy
DAS(Digital Assort System)
DASは、デジタルアソートシステムの略称で、人の仕分け作業を補助する機器です。
間口を仕分け先ごとに設置し、作業者がハンディーターミナルで商品のバーコードを読み取ります。バーコードを読み取ると該当の間口の棚部分に設置されたデジタル表示器に個数が表示されるため、それに従い作業者が商品を投入する仕組みです。作業の正確性を向上します。
取扱企業例
・ダイフク
・寺岡精工
GAS(Gate Assort System
GASは、ゲートアソートシステムの略称で、DASと同じ仕組みで人の仕分け作業を補助する機器です。その仕組みに加えて、間口にゲート(ふた)がついており、自動で開閉します。DASより視認性が高く、より仕分けミスを軽減できる仕分け機です。
取扱企業例
・タクテック
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DCにおすすめの自動化ソリューション
DCでは、在庫を保管・管理をしながら、注文に応じて商品のピッキング・出荷準備を行います。そのため、すべての工程が自動化の検討対象です。
一方で自動化を始める際は、後工程から着手すると荷物が滞留しない仕組みを構築できます。特定の工程に課題がある場合を除き、梱包→仕分け→ピッキング→保管の順に行うのもひとつの手です。
ここでは、TCの自動化で紹介した仕分け作業以外の代表的なソリューションを紹介します。
自動梱包機
自動梱包機とは、段ボールの組み立て作業である製かんやテープで封をする封かんなどの梱包作業を機械で自動化する装置を指します。単独機能をもつ「製かん機」「封かん機」を組み合わせたラインや、フルオートで連動する一体型のシステムまで、その形態はさまざまです。
送り状の貼り付けや梱包後の余白をカットできる機種やポストインサイズの箱、袋に対応できる機種も存在します。
取扱企業例
・タクテック
・ストラパック
・シプソル
AGV・AMR(無人搬送車)
AGV(Automated Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)は、倉庫内で商品やパレットの搬送を自動化する機器です。
AGVはガイドテープや磁気マーカーに沿って走行するタイプが一般的で、比較的レイアウトが固定された現場向きです。一方、AMRはロボット自身の位置を把握し、経路生成を行い、倉庫内の環境変化に柔軟に対応します。これらの中には保管棚ごとピッカーのもとに運ぶ無人搬送車もあり、この手法をGTP(Goods to Person)と呼びます。ピッキングエリアから梱包エリアまでの運搬を効率化し、作業者の歩く負担を削減するのに最適です。
取扱企業例
・Rapyuta Robotics
・ギークプラス
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ピッキングロボット
ピッキングロボットは、人の手によって行われていた商品のピッキング工程を自動化するロボットです。
カメラやセンサーで商品を認識し、ロボットのアームを用いてパレタイズやデパレタイズ、ピースピッキングを行います。人件費の削減やピッキングミスの軽減、作業者の負担軽減が期待できる点が特徴です。
取扱企業例
・MUJIN
・オカムラ
・THK
自動倉庫
自動倉庫は、倉庫の高さを活用したラックに商品を保管し、入出庫を行う自動化設備です。
ラックの通路を最小限に抑え、クレーンやシャトルが倉庫管理システム(WMS)からの指示で商品を運搬するため、省スペースかつ高密度の在庫管理が可能です。
代表的な自動倉庫の種類は次の通りです。
・スタッカークレーン式自動倉庫
・シャトル台式自動倉庫
・リトリーバ式自動倉庫 等
取扱企業例
・AutoStore
・RENATUS ROBOTICS
・Rapyuta Robotics
・Exotec、IH
目的とコストのバランスを見極めて自動化を検討しよう
TCの「スピーディーな仕分けオペレーション」と、DCの「効率的な在庫管理や出荷準備」は、いずれも物流網全体の効率性を支える重要な機能です。
それぞれの特性に合わせて自動化を進めることで、労働力不足や物流コスト増などの諸問題を緩和できる可能性があります。
自動化設備の導入をご検討の際は、目的とコストのバランスを見極めながら機種を選定してみてください。転ばぬ先の杖として、物流コンサルティングに助言を求めるのもよいでしょう。
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執筆者
田中 なお
物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。倉庫の現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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監修者
西尾 浩紀
大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハン設備を多数導入した国内最大規模の9万㎡の平屋建て物流センター立ち上げプロジェクトのマネージャーとして、業務プロセス設計から、総務・労務業務設計やスタッフ採用計画に至るまでの多岐に亘る業務設計をリード。センター稼働後はセンター長としてセンターマネジメントを実施。2018年株式会社CAPES設立。スタートアップから中小、大企業まで企業規模・ステージを問わず幅広く対応してきた実績を有する。特に自動化設備の導入・運用に関する豊富な知見を有し、EC物流の構築、物流センターの立ち上げ支援を得意とする。