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【2024年4月】物流DX、自動化に関する補助金一覧表
市場の状況
物流の自動化やDXを推進する際は、大きな投資額が必要になるケースが珍しくありません。またソリューションによっては比較的安価な商品もありますが、それでも中小企業にとっては負担に感じるケースもあるでしょう。
現在、国は2024年問題の解決や物流の生産性向上に向けて、さまざまな補助金制度を設け、公募しています。なかには補助上限額数億円といった制度もあり、新たな挑戦をするチャンスといえます。
当記事は、物流の自動化やDXに利用できる補助金制度をまとめました。現在募集がない制度も期間を開けて、再度募集が始まる場合があります。ぜひブックマークのうえ、定期的にチェックしてみてください。
目次
【2024年4月】物流DX、自動化に関する3つの補助金
補助金1.物流効率化に向けた先進的な実証事業
(荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業)
物流効率化に向けた先進的な実証事業(荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業)は、経済産業省から補助を受けたTOPPAN株式会社が実施する実証事業です。
荷主企業に対して物流の自動化設備、機器の導入費用を補助します。
■目的
この実証事業は、荷主事業者や物流事業者に対して、物流の自動化による投資効果を明らかにすることを目的としています。背景にあるのは、物流の2024年問題と需要と供給の不一致による輸送能不足への危機感です。物流を維持するためには、荷主企業の態度変容が重要であり、実証事業により物流の自動化による成果を広めて、投資意欲を高める狙いがあります。
■補助対象者
・中堅・中小企業等である荷主事業者(※公募要領の定義にもとづく)
・製造業、卸、小売等の事業者、ただし農業、林業、漁業を除く
・3PLも含まれうる
・大企業は補助の対象外(※コンソーシアムによる参画は可)
■補助上限額・補助率・投資下限額
■公募受付期間
2024年4月12日(金)~5月20日(月)17:00必着
■導入例
パレタイザー・デパレタイザー、自動倉庫、コンベア、垂直搬送機、AMR・AGV(無人搬送機)、自動仕分け機、無人仕分け機、ピッキングシステム・ロボット、バース予約システム、倉庫管理システム、伝票電子化・物流EDI、AIカメラ・システム、RFID等自動検品システム
※詳しくは以下の公式ページをご覧ください。
物流効率化に向けた先進的な実証事業
補助金2.中小企業省力化投資補助金事業
中小企業省力化投資補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構に採択され、全国中小企業団体中央会が事務局業務を運用している補助金制度です。人手不足解消に効果的なIoTやロボットの製品をカタログから選べるため、比較的応募のハードルが低いといえます。なお、5年間の効果報告が必要です。
■目的
中小企業省力化投資補助金は、中小企業の生産性と付加価値額の向上、賃上げを目的としています。
■補助対象者
人手不足の状況下にある中小企業
■補助上限額・補助率
補助上限額・補助率補助上限額は従業員数によって定められています。大幅な賃上げを実現した場合は括弧書き内の補助上限額に引き上げられることも特徴です。
■公募受付期間
申請開始時期未定
令和8年9月末頃まで、複数回公募予定
■導入例
カタログに掲載されている製品から、自動倉庫、検品・仕分けシステム、AGV・AMR(無人搬送車)
※詳しくは以下の公式ページをご覧ください。
中小企業省力化投資補助金事業
補助金3.物流施設におけるDX推進実証事業
物流施設におけるDX推進実証事業は、国土交通省が管轄しています。自動化設備、機器の導入、およびそれに関わるシステムの構築と連携を、同時に行う取り組みにかかる費用を補助します。
申請者には伴走支援の専門家が派遣されるため、社内に知見が足りない事業者におすすめです。現在1次公募は終了していますが、改めて2次、3次と公募が続く可能性があります。
■目的
持続可能な物流の実現を図るために、物流施設のDXを推進することを目的としています。トラックドライバーの荷待ちや荷役時間の削減、物流施設の省人化を目指します。
■補助対象者
・倉庫事業者
・第一種貨物利用運送事業者
・第二種貨物利用運送事業者
・トラックターミナル事業者
・一般貨物自動車運送事業者
・特定貨物自動車運送事業者
・貨物軽自動車運送事業者
・物流不動産開発事業者
・そのほか、上記の事業者と共同事業を行う事業者
■補助上限額・補助率
以下の2つを同時に取り組む必要があるため、あわせて補助上限額は、1億4,000万円です。
■公募受付期間
具体的な2次公募の予定はないものの、必要に応じて再公募の検討が行われると公式ホームページに記載されています。
■導入例
倉庫管理システム、在庫管理システム、AIカメラ・システム(ナンバープレート解析)、AGV・AMR(無人機器搬送機)、AGF(無人フォークリフト)パレタイザー・デパレタイザー、自動倉庫
※詳しくは以下の公式ページをご覧ください。
物流施設におけるDX推進実証事業
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物流DX、自動化に関する補助金申請の注意点
物流DX、自動化に関する補助金を申請するにあたり、事前に知っておきたい注意点がいくつかあります。準備や参画する事業の選定にお役立てください。
公募期間が短い
補助金の公募期間は、多くの場合1ヶ月程度です。応募には計画書や見積書などの書類を準備する必要があり、タイトなスケジュールで準備を進めなければなりません。なかには原則2社以上の見積書提出を条件にしている事業もあります。
応募したい補助金制度の締切がすでに迫っている場合は、次回の公募に向けて事前にKPIの策定や導入したい設備、機器の方向性を定めておくとよいでしょう。
併用できない補助金制度がある
一度補助金が交付されると、併用できない補助金制度があります。例えば、国土交通省と経済産業の補助金制度に対し、類似した内容で申請をすれば、審査対象から除外される場合があります。
一方で、国が所管する補助金制度と、自治体や中小企業基盤整備機構が所管する補助金制度とは、多くの場合において併用が可能です。所管する組織、目的、要件、補助金額を確認し、検討のうえ応募しましょう。
審査に落ちる場合がある
多くの補助金は、必ず受け取れるわけではありません。要件を満たしたうえで、審査に通過する必要があります。例えば今回紹介した補助金についても、DXへの投資効果を中小企業に広める目的を持つ事業や、省力化・賃上げを目的とする事業まで、その狙いはさまざまです。
事業全体の予算金額があらかじめ決まっているため、目的を果たせない申請は不採択になる可能性があるでしょう。審査の観点や評価基準は公募要領に明示されているので、チェックしてみてください。
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物流DX、自動化に関する補助金
物流DXや自動化に向けて、補助金を申請できる事業は少なくありません。今回は、物流DXと自動化にフォーカスして、確実な事業を紹介しましたが、広義では「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」や「物流生産性向上推進事業」なども対象になります。
補助金を上手に活用して、事業の成長や省人化を図っていきましょう。
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執筆者
田中 なお
物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。倉庫の現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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監修者
西尾 浩紀
大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハン設備を多数導入した国内最大規模の9万㎡の平屋建て物流センター立ち上げプロジェクトのマネージャーとして、業務プロセス設計から、総務・労務業務設計やスタッフ採用計画に至るまでの多岐に亘る業務設計をリード。センター稼働後はセンター長としてセンターマネジメントを実施。2018年株式会社CAPES設立。スタートアップから中小、大企業まで企業規模・ステージを問わず幅広く対応してきた実績を有する。特に自動化設備の導入・運用に関する豊富な知見を有し、EC物流の構築、物流センターの立ち上げ支援を得意とする。