HOW TO
自動化を知る
【事例】物流自動化の現状は?目的に最適な機種を選ぶことが重要
市場の状況
弊社は物流自動化に関するご相談を受ける機会が多いのですが、自動化設備の導入を検討される際に、どの設備をどういう目的で入れたらいいの?と迷われている方や、実際どのくらい普及が進んでるのかを気にされている方が非常に多い印象を抱いています。
この数年の物流自動化ソリューションの発展と市場へ投入されるプロダクトの数は飛躍的に増えており、これまで自動化が難しいとされていた工程の自動化ロボットが登場したり、初期費用を抑えて導入できる仕組みの登場などによって、自動化の普及がさらに進んでいます。
本記事では、実際どのくらい自動化設備が普及しているのか、導入企業がどのような目的を持って導入しているのか事例を用いて解説します。
目次
物流自動化の現状
まず本記事では物流自動化に初めて取り掛かられる方もいらっしゃるだろうことを意識して、基礎的な部分からしっかりと解説をしていきたいと思います。
昨今物流2024年問題で注目されているように、物流業界は労働時間の規制や慢性的な人手不足という大きな課題に加え、小口配達の増加で配達の複雑化・負担の増加により、将来的にものがスムーズに届かないことが起きると予測されています。
自動化はこれらの問題の解決策として取り上げられ、いよいよ本格的に自動化について考えはじめる方も多いでしょう。
本記事では読者の皆さんにも馴染みのある企業の自動化ロボットの導入事例やどのような目的を持って導入しているのかを考察していきますので、自社の最適な自動化手段の選定と導入目的の整理にお役立てくださればと思います。
【事例1】アマゾン:AGV × 良さを活かした自動化を選択
アマゾンといえば、ルンバのようなロボットが保管棚の下に潜り込み、商品の保管棚をピッカーのところまで運んでくるような人が動かずに作業している映像を見たことがありませんか?これはAGV(無人搬送車)という自動化ロボットを導入することで可能な作業です。
AGVはカメラとセンサーを使って自らの位置と走行ルートを認識しながら走行しています。人や障害物を感知するとその場で停止するなど、環境の変化に合わせて自分の判断で働いてくれるロボットです。アマゾンは早くから自動化に注目し、2012年に米キバ・システムズを買収してAmazon Robotics として自ら自動化ロボットの開発を積極的に行っています。
最近も、ProteusというQRコードでの認識ではなくスラム式の決まったルートだけではない走行が可能な新しいロボットを導入しました。
アマゾンはこのAGVを活用したピッキングシステムが印象的ですが、動画サイトでアップロードされている動画を注意深く見ると、全工程を完全自動化することはしていません。人手の作業を残しているように見受けられます。おそらくアマゾンは、人手不足が進んでいく未来を見越して、これまでの方法をただロボットに置き換えるのではなく、コスト効果が高い工程は自動化を進め、そうでないところは人とロボットの協働を目指す、といったように目的に合わせてどこまで自動化するのかを選択しているのでしょう。
これだけ自動化が進んでいるなら全自動化したらいいのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、全自動化を可能にするためには扱う商品サイズを同じにするような規格化が必要です。この手段をとってしまうと取り扱えない商品が生まれてしまうので、アマゾンの掲げる「地球上で最も豊富な品揃え」というブランドの魅力を損なう可能性があります。そのため彼らは自社の強みと自動化の良さをうまくバランスさせていると言えるのではないでしょうか。
また、この棚搬送型AGVですが、最近では月額制のサブスクリプションが登場したことで導入ハードルが下がっています。これからは大手企業だけでなく、中規模の企業の荷主や3PLなどで導入も進んでいくでしょう。
【事例2】アスクル:ピースピッキングロボットで全自動化に近づく
続いての事例はアスクルです。彼らは「人が歩かない物流センター」を目指し、人の介入を最小限にすることを念頭に積極的な自動化ロボットの実験と導入をしています。
たとえば、GTP(Goods To Person)を工程設計の核として、ピッキング場所までの歩行作業をゼロにして生産性を5倍に高めたというニュースがあったり、AGVで荷物の工程間搬送にいち早く取り組んだり、デパレタイズロボットで積み下ろしをしたりと、とにかく人が動かない作業工程をつくりあげています。
また、アスクルといえばアームロボットを想像する方が多いのではないでしょうか?従来のピッキングロボットはティーチングを行い座標指示の元で作業を実行していたので、決まった形、決まった機動にしか対応できませんでした。しかし、アスクルは株式会社Mujinと業務提携をし、自律型ピースピッキングロボットを導入し、アイテムを認識するビジョンを強化したロボットでこの課題を解決しました。ロボットが自分の目で認識し、判断できるのでティーチングを行うことなく幅広いアイテムに対応可能です。
まだまだ100%の精度ではないなど課題はありますが、その技術は確実に向上しておりアスクルを皮切りに物流業界でピースピッキングロボットの導入が進みはじめています。
【事例3】佐川グローバルロジスティクス:導入コストを抑えるAMR
先ほど取り上げた棚搬送型のAGVやアームロボットを導入するとなると、一つ大きなハードルがあります。コスト的な部分もさることながら、既存の出来上がったレイアウトではなかなか導入しづらいということです。既存の拠点で導入するとなると運用を一旦止めてレイアウトを作り変えて導入するということになるのですが、そうすると止めている間の出荷はどこから行うんだ、というような違った課題も出てくるためなかなか現実的とも言えません。
そんな課題に対して、現状のレイアウトを変えることなく既存の拠点でも導入できるロボットも登場しています。それがAMRです。最近導入事例も増えてきていることからこのAMR(協働搬送ロボット)を検討されている方も多いのではないでしょうか?
AMRは先程も述べたように現状の倉庫レイアウトのまま導入でき、費用面でも他の自動化ロボットよりも安価になるケースが多いため導入ハードルが低く、はじめての自動化にちょうどいいロボットと言えるのではないでしょうか。
2019年にGROUNDのAMRが日本で初めてダイヤモンドヘッド社に導入されたことを皮切りにラピュタロボティクスやシリウスといったAMRが日本市場に投入され導入を拡大しています。例えばラピュタロボティクスのAMRを導入した佐川グローバルロジスティクス社(以下SGL社)は当時、自動ピッキングカートと棚搬送GTPも検討していましたが、フロア全ての棚を入れ替えなければいけなかったり、通路が狭くて導入台数が少なくコストパフォーマンスが悪かったりと、導入コストを考えてAMRを選択しました。
SGL社は新しい技術を取り入れることに前向きな姿勢を持ち、将来的に人とロボットが融合したオペレーションが必要になると考えて、導入しやすいAMRから自動化の事例を積み上げていく考えのもと決断したのでしょう。
実際に2020年代に入ってから国内のAMR自動化が進んでいるようにみえます。弊社に自動化の相談があった案件を見ても、AMRの導入を検討されているクライアントが増えてきており、これから自動化を検討する際は、AMRも視野に入れて検討されてはいかがでしょうか?
サブスクリプション型の登場で自動化が加速する
また、費用面でも最近になってRaaSなどの自動化ロボットをサブスクリプション型で提供するサービスが登場しました。AGVやAMRなどを初期費用なしで導入でき、月額料金に運用サポートやシステム調整が含まれるだけでなく、現場の変化に合わせながら改善し続けることが可能です。
これからはサブスクリプション型が登場したことで中規模企業が導入しやすくなり、どんどん自動化が進んでいくのではないでしょうか?
保管効率×作業性を考慮したCUEBUSに注目
AGVやAMRの導入が進む一方、全く課題がないかというと実はそうでもありません。AGVやAMRは人が届く高さまでの保管棚の高さが限定されるため、倉庫の保管効率の悪さが課題とされてきました。国土の狭い日本においてはこの保管効率の悪さは無視できない課題であったため保管効率と作業性を充実させる方法が必要とされてきました。
この課題を解決できる自動化ロボットとして昨今「CTU」「CUEBUS」「SKYPOD」といったプロダクトが登場しはじめています。各社ともに製品性能は違うものの、それぞれが保管効率の悪さに対しての解決策を提案しています。
物流自動化を成功させるには
ここまでの事例で紹介したように、効果的に自動化ロボットを導入する際には自社の目的に応じて最適な機種を選ぶ必要があります。
最適な機種選定のためにも、まずはなんのために自動化をするのか目的と目指したい自動化率を明確にするところから検討を始め、どのような自動化ロボットがあるのか知識を深めるのがいいでしょう。
本サイトでは自動化を知ることから検討、導入、運用までのノウハウを発信しています。自社の導入目的を明確化するための考え方や、導入フローやポイントなど、自動化の成功までを手助けする記事がありますので、ご参照ください。