HOW TO
実際に導入する
知っておきたい自動化設備に格納するアイテムの決め方とポイント
要件定義
自動化設備に格納するアイテムの選定は、効率的な物流を実現するための重要なステップです。スペースや予算などの制約を考慮しながら、効率よくピッキングできるアイテムを選定する必要があります。
アイテム選定に失敗していることに気付かず、「人が作業していたときの方が効率が良かった……」と後悔するようでは本末転倒です。ポイントをしっかり押さえて、パフォーマンスを高めていきましょう。
目次
自動化設備に格納するアイテムの決め方
自動化設備に格納するアイテムを決めるには、大きく分けて3つの手順があります。次の通りです。
1. アイテムリストを作成
2. 各アイテムのサイズ、保管数量、出荷頻度を検証しながら、自動化設備のエリアから除外するアイテムを決定
3. 自動化設備の予算と保管スペースを加味して、格納するアイテムを決定
まず保管アイテムのリストを作成します。リストの情報をもとに自動化設備から除外するアイテムを決定。その後、予算や保管スペースの制約にもとづいて、格納するアイテムに微調整をかけていきます。「自動化設備にかけられる予算が限られている」「保管スペースに入らない」となれば、さらに自動化設備エリアのアイテムを削らざるを得ません。
順を追って整理することにより、現状での最適解が見えてくるでしょう。
自動化設備に格納するアイテムを決めるポイント
前述の通り、自動化設備エリアから除外するアイテムを決定する工程では、商品情報にもとづく3つのポイントをチェックします。
・サイズ
・保管数量
・出荷頻度
それぞれ具体的な考え方を解説していきます。
アイテムのサイズ
自動化設備に格納するアイテムを選定する一番簡単なポイントは「アイテム単体のサイズ」です。各自動化設備には収められる容量があり、すべての商品が適合するわけではありません。
自動倉庫はコンテナのサイズを基準にし、AGVは棚の間口を基準にする必要があります。例えば、脚立や物干し竿といった長物の商品は、これらの設備に収納するのが難しい場合もあるでしょう。
まずはアイテムのサイズと設備が対応できるサイズを確認し、格納できないアイテムを除外しましょう。
アイテムの保管数量
次に保管する各アイテムの数量をチェックします。
500本のペットボトルを取り扱っている場合を考えてみましょう。1つのロケーションでは格納できないため、複数にわたるロケーションを使用するかどうかを決定します。この際、ロケーションの運用方法が関わってきます。
固定ロケーションで運用する場合は1アイテムに1つの間口が割り当てることが一般的です。一方フリーロケーションを採用する場合は、1つのアイテムに対して間口が複数にわたっても問題ありません。
これらの点を踏まえ、数量が多いアイテムを自動化設備から除外するか検討しましょう。
固定ロケーションとフリーロケーションについて、詳しくは以下の記事で解説しています。
アイテムの出荷頻度
アイテムの出荷頻度も、自動化設備で取扱うアイテムの判断軸となります。出荷の頻度を「高頻度」「中頻度」「低頻度」に分けて検討を進めます。
「1週間に1回以上ピッキングする商品は中頻度」「毎日出荷は高頻度」など、その定義は各企業によって異なります。
出荷が高頻度の商品は、人のエリアでパレットにまとめて出荷する方が効率的です。そのため、自動化設備エリアには入れないのが一般的ともいえます。保管数量の多い商品は出荷頻度も高い傾向にあります。
一方、出荷が中頻度や低頻度の商品は自動化設備エリアの対象アイテムとなります。
とはいえ、あまりにも低頻度な「死に筋」や「不動在庫」と呼ばれる商品は、自動化設備エリアから除外するのがベストです。
商品がほぼ動かないのであれば、パフォーマンスの高い設備を導入しても、効果を発揮しません。ABC分析などを用い、検証してみてください。
自動化設備への格納に適さないアイテムの特徴
その他の観点でも、自動化設備への格納に適さないアイテムの特徴をチェックしましょう。
液体、スプレー、食品
液体、スプレー、食品など万が一自動化設備から落下した際に内容物が漏れる可能性がある商品はあらかじめ除外しておく考え方もあります。特にAGVにおいて落下トラブルは珍しくありません。システムに影響を与えそうなアイテムは外すことでリスクを回避できます。
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重量物
自動化設備の最大重量には制限があるため、重量のある商品は不向きな場合もあります。特にいくつかの自動化設備を繋げて使用する際には、AGV・自動倉庫・コンベアなど全体を見て決定しなければなりません。
精密機器
導入するソリューションの性能により、故障の恐れがある精密機器は人が扱う方が適している場合もあります。一概に自動化設備への格納から除外するものではありませんが、注意が必要です。
冷蔵品、冷凍品
冷蔵・冷凍倉庫に対応しているソリューションは、国内で片手に数えるほどしかありません(2023年現在)。対応していない自動化設備を導入するケースでは、除外する必要があります。
自動化設備に格納するアイテムの見直し
自動化設備への格納に適したアイテムは、日々変化していきます。なぜなら、出荷頻度は商品の改廃や売れ行きによって変化するからです。
「1ヶ月に1回」「半年に1回」など、状況に合わせてアイテムを見直すタイミングの目安を決めておくと良いでしょう。作業効率が表示されるソリューションを導入するのであれば、効率の低下が見られた際に、「格納されているアイテムに原因があるかもしれない」と疑ってみるのもひとつの手です。
自動化設備のパフォーマンスを最大限に引き出すためには、都度最適化が必須といえます。
AGV運用の最適化も以下の記事で解説しているので、合わせてチェックしてください。
自動化設備に格納するアイテムを改善した事例
ここで自動化設備に格納するアイテムを改善した事例を紹介します。
大手家具・インテリアメーカーでは、当初布団をAGVで取り扱おうとしていました。商品単体の大きさとして、AGVで運ぶ棚に載せることはできたものの、サイズが大きく、それなりの重量もあります。そのため、ピッカーが棚から商品をおろす作業に時間がかかってしまいました。
人のエリアで作業するよりも効率が落ちてしまったため、当該商品を自動化設備のエリアから除外。他商品をあてがったことでパフォーマンスは改善しました。
メーカーと相談しながら、自動化設備に格納するアイテムを決めよう!
自動化する工程を決めるのは、自社内の課題にもとづき決定できます。しかし、そこに格納するアイテムについては、導入するソリューションの金額と予算、スペースに制約を受ける部分があります。
したがって、詳細を決めるにあたってはメーカーとのコミュニケーションが必要になるでしょう。「toC向け、40サイズくらいのサイズの商品を格納したい」といったざっくりとしたイメージを持って、メーカーとコミュニケーションを始めるとスムーズです。
また自動化設備への格納に適さない条件がいくつかあります。アイテムのサイズ、保管数量、出荷頻度をひとつずつ検証しましょう。運用開始後、違和感があれば格納するアイテムを調整して、より効率化ができるように適正化を進めていってください。