HOW TO
実際に導入する
自動化設備導入プロジェクト始動。キックオフミーティングに向けて抑えておくべきことは?
プロジェクト管理
自動化設備の導入は、導入する機種の選定やベンダーとの契約を完了すれば終わりというわけにはいきません。自動化設備を導入する際には、これまでの業務フローや運用人数、WMSなどのシステムに影響が生じる場合がほとんどですから、現状の運用から設備導入後の運用へ切替を実施していく必要があります。
この切替までの一時的な期間に、決めるべきこと・やるべきことを実行していくために、「プロジェクト体制」を組むことになりますが、今回はその始動の際に抑えておくべきポイントを解説していきます。
目次
そもそも「プロジェクト」とは?
プロジェクトとは、独自の目標を期限内に実現するための活動です。業務としては大きく2つあり、「定常業務」と「プロジェクト」です。定常業務とはいわゆるルーティンと呼ばれ、日常的にしている業務です。一定の手順やマニュアルが整備され、継続性があります。
一方、プロジェクトは特定の目標(新規事項だけでなく問題や課題の解決も含む)があり、「いつまでに何を達成するのか」が定められています。ISO21500では「目的を達成するために遂行する開始日と終了日をもち、調整し、管理する活動で構成するプロセスの独自性のある集合」と定義されています。
プロジェクトが発足したら最初にプロジェクトメンバーを定義し、キックオフミーティングを実施しましょう。スタートするプロジェクトの目的や方針を共有し、メンバーの意識を合わせておくことは、プロジェクト始動時の重要なプロセスとなります。
プロジェクトにアサインするメンバーの考え方
プロジェクトの推進体制は、現場運営者が担当するケースと本社の企画メンバーが担当するケースがあります。現場運営者が推進する場合のメリットは、現状の運用をよく理解しているので、導入時の変更点をより網羅的に把握できる点です。
一方で、現場運営者は、普段の定常業務に従事しているメンバーですので、プロジェクト型の仕事に求められるスケジュール管理やリスクマネジメント等のスキルセットが不足しがちです。また、現場運営者は、日々の業務を実行しながら兼務でプロジェクトに参画する形になりますので、優先は日々の現場業務をきちんと回すことになります。そのため、プロジェクト遅延のリスクが高まります。
本社の企画メンバーが担当する場合は、自身の工数をプロジェクト管理に注力できるので、プロジェクト推進に適したアサインといえます。ただし、企画メンバーの場合は、現場の知識や導入の背景への理解に限界がありますので、実際の現場運営者を巻き込みながら推進していく体制を組むことが大切です。
よくある失敗ケースとして、プロジェクト会議を常にオンラインにて開催し、企画メンバーが現場に行く機会がないことです。その結果、運用への理解がなかったり、現実からかけ離れた計画を立ててしまったりすることがあります。
実際に運用していく側に寄り添い、理解していくことは、プロジェクト成功のカギといえます。また、外部企業の力を借りてプロジェクトを推進することも選択肢の一つです。PMO(Project Management Office)の活用についても検討するとよいでしょう。
プロジェクト始動時に関係者で認識を合わせるべきこと
プロジェクト始動時には、定例会議やディスカッションを始める前に、まずキックオフミーティングを実施しましょう。キックオフミーティングでは、プロジェクトの目的や方針を共有することで、プロジェクトメンバーが同じ指針をもってプロジェクトに参加できるようにすることを目的とします。キックオフミーティングの際に共有する項目として、以下の10個を整理できるとよいでしょう。
(1)何年後を見据えたものとするか
現時点から何年後までを今回導入する設備で運営する予定なのかを定義します。
(2)現状の課題・対策
現状の課題は何で、今回の設備を導入することにより、どのような形でそれを解消しようと考えているのかを定義します。
設備導入の目的を明文化しておくことで、プロジェクト推進の中で判断に迷った際に、ここに立ち返れるようにし、正しい意思決定ができるようにします。
(3)必要処理物量(AsIs ToBe)
(1)の何年後を見据えたものとするか、に紐づく形で将来物量を定義します。
工程ごとの物量を定義しましょう。
(4)全体スケジュール
メンバーが意識しておくべき主要マイルストーンは明記します。
プロジェクト始動時点では想像でも構わないので、稼働日から逆算して検討しないといけない内容を落とし込んでおきます。
(5)投資方針
投資予算、回収の目安を明確にしておきます。制約があることで設計がしやすくなったり、ベンダーとの交渉の基準になります。
(6)現場業務と将来業務の業務フロー・手順差分
現状と将来でどこをどう変えようとしているかを工程ごと(入庫・検品・格納等)に整理します。プロジェクト始動時は大枠のフローでかまいません。
(7)工程ごと生産性・運用人数
・現状と今後を整理して、物量とそれを処理する生産性・工数がどう変わるのかを定義します。
(8)マテハン
既存の設備に影響がある場合は、その内容を明記します。
(9)WMS
既存のWMSを活用するのか、刷新するのかの考え方を定義します。刷新する場合はどういった機能を満たしたものであるのかという希望や要件を整理します。
(10)基幹システム
基幹システムの改修・刷新の必要性や方向性について明記します。
キックオフミーティングで決めるべきことをチェック
プロジェクトを立ち上げる際には決めるべきことがたくさんありますが、これらを定めずにプロジェクトを進めてしまうと、プロジェクトが迷走したり空中分解するリスクになりますので、しっかりと準備を行うようにしましょう。