HOW TO
運用する
AGVのよくあるトラブル3つと対処法!大量エラーの具体事例も紹介
トラブル対応
AGVで発生しやすい代表的なトラブルがいくつかあります。
しかしそうしたトラブルはメーカーの営業資料には載っていません。
そもそもメーカーより実際に現場を見ているユーザーの方が生々しい情報を握っているのが実情です。
本記事では数々の現場を見てきた経験から、AGVでよくあるトラブルと実際に対処に当たったトラブルの具体事例を紹介します。
稼働できたからと安心せず、トラブルに備えることは重要です。保守体制を考えるきっかけにしてみてください。
目次
AGVのよくあるトラブル3つと対処法
まずはAGVの代表的なトラブル3つとその対処法を紹介します。
特に社内で対処できるトラブルを取り上げました。エラーを復旧し、その日の作業を継続するための暫定対応と、同様のトラブルをなるべく発生させないための恒久対応を行いましょう。よくあるトラブルをあらかじめ理解していれば、慌てずに対応できるはずです。
トラブル1.商品の落下
AGVエリアでは、棚から落下した商品がトラブルの原因になります。
AGVが走行中に落下した商品を検知し、エラーが発生。小さい商品が落下すれば、AGVが検知できずに踏んでしまう場合もあります。
暫定対応では、落下した商品を拾い上げAGVを再起動しましょう。
恒久対応では、商品落下を防ぐための落下防止バンドの活用が有効です。AGVが旋回する際、少なからず遠心力がかかります。
ケース商品や間口に設置したロケ箱が落下しないよう、落下防止バンドで固定します。
なお落下防止バンドを活用しても、バンドがかかっているケースより上に高積みしたり、ロケ箱内に商品を入れすぎたりすれば、やはり商品が落下する可能性はあがります。
特に小物商品やツルツルしたPP袋に封入されているアパレル商品は落下しやすいため、注意しましょう。
トラブル2.最大積載量の超過
AGVの最大積載量の超過によるエラーも生じやすいトラブルです。
AGVには500kg、800kg、1tなど最大積載量のグレードがあります。定められた重量以上の商品を格納すると、エラーが発生して運べません。
暫定対応では、重量を考慮して商品を一部他のロケーションに移動後、AGVを再起動させましよう。恒久対応としては、最大積載量と商品重量の確認が挙げられます。
商品マスターを整備しましょう。
そもそも商品マスターの整備が前提の固定ロケーションでは発生しづらい事象です。
フリーロケーションであっても、雑貨系、アパレル系の比較的軽い商品であれば、積載重量の超過は考えづらいでしょう。
工業製品のようなカテゴリーの商品、大量のネジなど重量が重い商品を保管する場合には注意が必要です。
<関連記事>
トラブル3.QRコードやARマーカーなどの読み取り不良
画像認識方式のAGVは、読み取り不良でトラブルになる可能性があります。
画像認識方式では、床と棚にQRコードやARマーカーが貼付されており、AGVの天面と底面についたカメラで情報を読み取りながら走行します。
つまり読み取りができない場合、AGVは「自分がどこにいて、どの棚を取れば良いのかわからない」状態になってしまうのです。
ではなぜ、読み取り不良が起こるのでしょうか。
読み取り不良の原因で多いのは床に被ったホコリやゴミです。暫定対応、恒久対応ともに清掃で対処することになります。清掃の頻度やタイミングを見直してみるのも良いでしょう。
AGVのトラブル事例
では次に実際のトラブル事例をチェックしましょう。
具体事例からは対処の苦労が実感できるはずです。「トラブルを発生させない意識」を持つために役立ててください。
大規模なAGVエリアで大量エラー発生
大規模なAGVエリアで、大量エラーが発生しました。小さな商品の落下が原因です。
AGVが検知できず、商品を巻き込んだまま走行し、床面に貼付されたQRコードを次から次へと剥がしながら走行してしまったのです。
QRコードが剥がされた場所では、他のAGVでも読み取り不可のエラーが生じたため、芋づる式に大量のエラーが発生。しかし多数のAGVが走行するうち、トラブルのもととなっているAGVが特定できません。
特定するためにAGVエリア内の作業をすべてストップ。1台ずつAGVの下を覗き込み、商品を巻き込んでいる1台を発見しました。
数十枚規模のQRコードを剥がしてしまったため、バーコードシールを再発行して貼り直さなければなりません。スタッフ総出で2時間のうちに復旧しましたが、当日は出荷遅れが発生してしまいました。
バーコードシールを現場で出力できる環境があらかじめ用意されていたことは、不幸中の幸いです。商品の落下には十分に注意しなければならないと感じる事例です。
床のヒビ割れにタイヤがはまってAGVが停止
AGVエリアの床にヒビ割れ(クラック)が入り、タイヤがはまって動かなくなってしまうトラブルが発生した事例です。このヒビ割れは目地が入っていた床に AGVを常に走らせたことでダメージが蓄積して生じたもの。コンクリートの目地とヒビ割れを埋めて修復する必要がありました。
1箇所ではなく、次々に何十箇所と発生してしまったため、現場スタッフが補修の技術を習得し対処することに。(※現場スタッフでの対処を勧める意図はありません)
補修後も、床が乾燥するまでは「AGV走行禁止区画」と設定しなければなりませんでした。基本的に目地やヒビ割れがある床でAGVを走行させることはおすすめできません。
長時間稼働・重量物の搬送といった条件下では、短時間稼働・軽量物の条件と比較して、床面やAGVのタイヤに与えるダメージの影響が大きくなります。破損やタイヤの摩耗に注意しましょう。
AGVのトラブルに備えてできること
こうしたAGVのトラブルは発生させないことが第一です。一方で発生してしまった場合には、社内でリカバリーできる事象とメーカー問い合わせが必要なケースに分かれます。
平常時は運用チームが商品落下などのトラブルが起きない工夫を図りながら、並行してトラブル発生時に対応できる保守チームを構築しましょう。
システム内部のトラブルを解決するにはメーカーに頼らざるをえません。WCS内にデータが滞留してしまい、動作が遅くなるようなトラブルが挙げられます。
AGVのトラブルに備えるための保守について、以下の記事でさらに詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
AGVのトラブルを理解して、環境整備と冷静な対処を
ロボットであるAGVはヒューマンエラーを起こしたり、疲れてサボってしまったりすることはありません。一方で人間同様、環境の整備なくしては気持ちよく動き続けられない繊細な面もあります。
特に商品の保管状況や床面の状態は注意を払うべきポイントです。
AGVの導入と稼働をゴールとせず、気を抜かずに運用してみてください。トラブルを理解することは、効率的な運用への第一歩ともいえるでしょう。
<関連記事>