HOW TO
実際に導入する
WMSとWCSを連携し物流を自動化!要件定義までの流れと注意点
要件定義
物流センターの自動化には、WMS(倉庫管理システム)とWCS(倉庫制御システム)の連携が必須です。連携時にはWMSとWCS間でやりとりをするデータの「内容」「タイミング」「方式」を決めるために、メーカーとユーザーでミーティングを重ねる必要があります。ところが大抵の場合、WMSメーカー、自動化設備メーカー(WCSメーカー)、ユーザーの3社間でこの細かい取り決めをしなければならないために、コミュニケーションの齟齬が起きてしまうケースが少なくありません。その結果、稼働後にシステムトラブルを起こしてしまうことも。
このようなディスコミュニケーションを起こさないよう、連携する目的、要件定義までの大まかな手順、注意点、費用感について押さえておきましょう。自動化に一歩近づくよう、お役立てください。
目次
WMSとWCSを連携する目的
WMSとWCSの連携は、出荷オーダーにもとづいて自動化設備を動かすことを目的としています。WMSはWCSに指示を出し、WCSは作業した結果をWMSにデータとして返します。
例えば棚搬送型ロボットAGV(以下、AGV)から出荷したい場合、連携により次のような自動化が可能です。
(1)WMSがWCS(RCS)に「AGVロケで保管されているAの商品を◯つ取り出してください」と指示する
(2)WCS(RCS)はWMSから受け取ったデータをもとに、「(いくつもあるAGV中から)どのAGVを、どんな経路で作業者の手元に届けると最短か」経路を計算し、AGVを制御する。
(3)作業者の手元に届いた商品のバーコードをスキャナーで読み込むと、WCSからWMSにデータが返送される。
(4)ピッキング完了としてWMSの作業進捗に反映される。
WCSは自動化設備に付帯するシステムです。物流を自動化するうえで上位システムにあたるWMSとの連携は必須といえます。
押さえておきたい要件定義までの流れ
WMSとWCSを連携するためには、最低でも3ヶ月ほどの期間が必要です。ここでは要件定義までの大まかな流れを解説します。
自動化設備の支援を受ける工程を決定
まずは自動化したい作業工程を決定します。「物流のDX化」を目的として自動化設備の導入を進めると、求める効果や必要な機能などがぼんやりしてしまい得策ではありません。
「生産性の向上」「持続可能な物流の構築」「営業面でのPR」など目的を明確にして、自動化が必要な工程を見定めましょう。おのずと導入したい自動化設備、およびメーカーが絞られます。
現状把握と目標値の設定
次に自動化する作業工程の現状把握と目標値の設定です。まず現在必要としている人員数と時間、工数、物量を数値化し、可視化します。物流の波動を考慮して、一定期間記録を取りましょう。
このデータ収集のプロセスを経て、目標値の設定が可能になります。人員数や作業にかかる時間を半分にしたいのか、はたまた1/3にしたいのか、現状と比較した目標値を設定してください。
自動化設備メーカーが「◯時間稼働する前提でロボットが◯台必要」といった効果に即した計画を立案するために、現状把握と目標値の設定は重要となります。
自動化設備メーカーと打ち合わせ、相見積もり
自動化設備メーカー(WCSメーカー)が数社に絞られたところで相見積もりを行いましょう。メーカーにより相場感が大きく異なります。
ユーザーが主導でRFP(提案依頼書)を作成することがポイントです。「何を」「いくらで」「いつまでに」したいかといった要求をしっかりまとめてから見積もり等の依頼をしましょう。
目的や情報を事前にまとめておくことで、ユーザーは同じ条件で正確に比較できます。またメーカー側も混乱なく対応できるため、双方にとってよいコミュニケーションが図れるでしょう。そして見積もりをもとに自動化設備メーカーを選定します。
WMSメーカー・自動化設備メーカー(WCSメーカー)・ユーザー3社で要件定義
自動化設備メーカーが決まると、要件定義に進みます。WMSメーカーと自動化設備メーカー(WCSメーカー)、ユーザー3社で定例ミーティングを設けます。
※大前提として、WCSは自動化設備に付随するシステムであるため、主に自動化設備メーカーの取り扱い商品である点は理解しておきましょう。
「入庫」「検品」「棚入れ」「ピッキング」など細分化した工程ごとに設備と関わる作業と関わらない作業を洗い出しましょう。設備と作業に関わりがある部分については、WMSと現場の運用にどんな変更が必要か突き詰めて話し合いをしていきます。
ユーザー側は、現場の作業に詳しいスタッフとWMSを利用して作業しているスタッフの両者がミーティングに参加できると、現場の運用への落とし込みがスムーズです。
WMSとWCSを連携する際の注意点
次にWMSとWCS連携時にメーカーとのコミュニケーションにおいて、注意すべきポイントを2つお伝えします。
メーカー間のコミュニケーション
ユーザーがメーカーの間に入り、良いコミュニケーションを図る工夫は重要です。WMSとWCSのメーカーが異なる場合、両社のコミュニケーションが疎かになってしまうケースが散見されます。責任の所在があいまいになり、必要な確認がなされないまま放置されてしまうことも。
そのため確認もれのないよう、ユーザー側も注意しなければなりません。一律にリモートミーティングだけに頼らず、ポイントとなる議題を整理する際は現場視察など対面する機会もセッティングしましょう。細かいニュアンスの確認ができるため、齟齬が生じにくくなります。
イレギュラー発生時の対応
業務上のイレギュラーは、WMSとWCSの連携時に細かく想定する必要があります。特に人と設備が絡むミスが起きやすいピッキングの工程には注意を払いましょう。
例えば、商品をのせた棚をAGVが運んできた際に、ピッカーが1つ取り損ねてしまい、棚が所定の位置に戻ってしまうようなピックミスが考えられます。この場合、検討されるのは以下、いずれかの対応です。
・WCSで棚を呼び出して、WMSとWCSの在庫を連携する
・WMSから不足分のピッキング指示を与える
このように業務上起こりうるあらゆるミスを想定し、実在庫と理論在庫がずれないようにしなければなりません。現場が取るべき対応やデータの連携方法について突き詰めて議論しておきましょう。
自動化設備の導入にかかる費用
相見積もりにあたって、ざっくりとした費用感も掴んでおきたいですよね。自動化設備、およびWMSとWCSの導入にかかる費用は、相場を一概にあらわせるものではなく、メーカー・ソリューションにより大きく異なります。自動化設備は小規模であれば数千万〜大規模であれば数十億円。自動化設備を除いたシステムだけでも数千万円から1億円ほどの金額はかかってきますのでシステムも忘れずに予算は見込んでおきましょう。
自動化設備の導入にかかるシステムの費用は、大きく分けて次のような内訳が含まれます。
・WMS改修費
・WCS設計費
・ハードウェア費
・保守費
いずれにせよ、少額ではないため社内稟議を通すための対策も必要です。自動化設備本体の金額だけでなく、システムにかかる費用も多額になると覚えておきましょう。
WMSとWCSの連携は導入時が最重要!
WMSとWCSの連携には、企業間をまたいだコミュニケーションが必要となるケースがほとんどです。自動化設備と人がうまく協働するために、要件定義を通じたベンダー2社との合意形成が非常に重要といえます。なぜならWCSは日常で操作する必要がほとんどなく、稼働前の設定がすべてといっても過言ではないからです。
スムーズな自動化設備の導入ができるよう、本記事を参考にコミュニケーションを図ってみてください。