HOW TO
導入を検討する
物流自動化の検討時に必要なこと。導入検討のフローとポイントを説明
機種選定
物流業界において、人的リソースの確保は喫緊の課題です。そもそも日本は人手不足の環境下にあります。人材を採用・確保できてもコロナの影響で出勤できない、シフトが組めないといった突発的な状況も発生します。
そうした中、注目を集めているのが「自動化」です。属人的な業務を自動化することで、業務の効率化や平準化、継続性を図ることができます。
この記事では物流領域における自動化を検討する際の、全体的なフローや検討のポイントをわかりやすく説明します。
目次
目的整理
自動化に際して、まずは目的の把握と明確化が必要です。例えば、属人的な業務の省人化、省力化、効率化、コスト削減などが挙げられます。ビジネスの拡大や将来の環境変化に備えるといった側面もあるでしょう。
目的は関係する部署やステークホルダーによっても、部分最適か全体最適なのか異なる場合があります。例えば、物流現場の限られた一部の工程を自動化し最適化するのか、あるいは倉庫全体のオペレーションを自動化するのか、対象と範囲によって目的が大きく異なります。そのため、関係者間で十分な目的のすり合わせが必要です。
現状把握
現行の運用・稼働状況、スループット(単位時間あたりの処理量)やボトルネックとなっている箇所を把握します。
工程や工数ごとに要素分解を行い、所要時間や動線の長短、ムダの有無や必要な作業人数、作業上のリスクなどを把握します。また、どのような経緯で今の仕組みに至ったのか、現在の外部や内部環境との乖離、将来どのような仕組みを目指したいのかも確認すると良いでしょう。現状把握は担当部署や担当者のヒアリングだけでなく、実際に現場に足を運び、自らの目で確かめることも必要です。
リサーチ
現状把握をした後、課題を解決する方法についてリサーチを進めます。
課題解決のツールとなりうる物流機器、ロボット等のマテハンについて、ベンダーへ問い合わせ資料請求を行います。また、実際にベンダーのデモを見学することも必要です。
実際にマテハンを導入した他社の見学も参考になります。同様の導入事例を見学することで、自社のシステム構築のイメージを立てやすくなります。また、他社のシステムをベンチマークにすることができます。
提案依頼、見積精査、稟議、ベンダー確定
リサーチの次は、ベンダーに対するRFP(Request For Proposal:提案依頼書)の作成です。RFPをベンダーに送付し、提出された提案書を精査します。
この際、相場観を知っておくと、ニーズに合わない提案や提案金額を除外できます。提案書はさまざまな観点から精査します。見積は初期費用だけでなく、月額のランニングコストやトラブル時の対応費用、スポット費用などについてもトータルで確認します。その際、複数のベンダーの提案を、同一指標で比較することが大切です。
見かけのコストの安さだけに引かれると結果的にコストアップとなってしまう場合もあります。十分に比較検討し、課題解決とROI(Return on investment:投資に対する効果)を実現できる提案を採用しましょう。その後、社内稟議を通し、ベンダーを確定します。
要件定義(As-is To-be整理)
現状把握の結果をもとに「As-is」をまとめます。「As-is」とは現状、現在の姿を意味します。続いて、あるべき姿や達成したい目的、課題解決を「To-be」として要件定義します。
「To-be」設定の際は、ビジネスの成長率や、想定される新たなサービス、将来的な業務量の増加も考慮します。これらは新規に導入するシステムの対応余力や拡張性の必要有無を判断する時にも役立ちます。
基本設計
基本設計では、前工程の要件定義において抽出した要件を機能単位に分割します。
それぞれの機能が「何を実現するのか」「機能同士がどうつながるのか」を整理し、システムの全体像を構築します。基本設計は目的達成の仕組みを構築する、重要なプロセスです。
製造・調達
ベンダーから導入するシステムの調達を行います。
カスタマイズや自社の要件に合わせた最適化が必要な場合は、製造・調達のリードタイムを長く設定しなくてはならないことも。海外から調達する際は、コロナの感染拡大によって輸入が大幅に遅延したケースもあります。全体の導入スケジュールへの影響も考慮しましょう。
据付工事、テスト
新システムの導入や据付工事に際しては、現行の運用体制への影響を最小化するようにします。
また、新システムへ移行時に問題が発生した場合、現行の運用体制に戻れるようにしておくことも重要です。移行前にスモールスケールでのテストを行っておくのも良いでしょう。実際に現場に導入してみると、設計段階とは異なる点も発生します。現場スタッフと自動化機器の接触事故の可能性など、リスクの確認も必要です。
トレーニング
ユーザー目線でマニュアルを作成します。
現場スタッフの理解レベルは様々です。日本国籍だけでなく、外国籍の方もいるかもしれません。誰が運用しても同じ結果がアウトプットされるような内容が求められます。
トレーニングの時間も複数の時間帯を設定し、スタッフが抜け漏れなく受けられるように配慮すると良いでしょう。現場のスタッフが対応できなければ、コストをかけて自動化を導入しても効果が薄くなります。
稼働開始
新しい仕組みの導入後は、安定稼働を目指します。定期的なレビューを行い、想定した効果や省力化、効率化ができているかモニターします。
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し可視化できると、改善点も把握しやすくなります。導入後の評価については、定量的な数値的な側面だけでなく、現場の声や体感など定性的な面も含めて両面から行うと良いでしょう。
まとめ
自動化によって課題が解決されると、時間や余力が生まれ、新たな価値創造ができる可能性があります。将来のビジネス拡大や環境変化にも対応できるよう、十分な検討を進めましょう。