HOW TO
自動化を知る
自動化設備の導入が最適なソリューションなのか
自動化の効果
日本の庫内作業の自動化率の向上・促進をしていくためのメディアに掲載する記事にしては少しドキッとするようなタイトルですが、色んな規模・業態のお客様とお話する中で課題感とそれに対する打ち手をお伺いしているとどうも手段である自動化設備の導入が目的化してしまっている気がします。本当にいまやるべきことは自動化設備の導入なのでしょうか。自動化には興味関心があるんだけどイマイチピンとこない。でも考えないといけない。そんな状況にある企業・ご担当者さまも多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では物流現場における自動化設備の導入の現状や自動化設備を導入するために整理すべきこと、やるべきことについて解説していきます。
※尚、本記事に記載している内容は共著書「物流現場の最適化DX」にも詳しく記載しておりますので合わせて御覧ください。
目次
日本の物流現場は自動化との相性が悪い!?
日本の庫内作業の自動化については、古くは1980年代頃に高密度の保管を実現する自動倉庫の導入が一部で始まったのを皮切りに、仕分け、梱包、ピッキングと領域が広がってきました。特に昨今熱を帯びているのがピッキングの自動化ではないでしょうか。大型のルンバのような形状のAGVに棚を搬送させてピッキング時の歩行をゼロにするいわゆるGTP(Goods to Person)ソリューション、またそれを更にロボットに連携していくGoods to Robotsと進化を遂げていっている様相が見て取れます。
しかし順調に自動化を推進できている企業はほんの一握りでごく一部の企業のみがやりたい自動化を実現できているという状況ではないでしょうか。
これにはいくつかの理由が考えられますが、そのうちの1つとして日本の顧客の要望に応えきるきめ細やかな業務設計が大きく影響していると考えられます。顧客のこうしてほしい、ああしてほしい、という要望に応え続けた結果、ものすごく高い顧客満足度を実現し、日本の物流サービスレベルの水準は世界で見てもかなり高いものになりました。
しかし見方を変えると顧客ごとの要望に応えるということは各社各様のルールや条件、作業フロー・手順が出来上がるということであり、これが自動化と相性が悪いのです。車などの生産工場のラインをイメージいただければ分かりやすいのですが基本的に単一の型・部品ばかりが流れてくるようになっており、このようなラインであればサイズも作業も同一となりやすく、自動化設備も複雑な判断も作業も必要なく工程設計しやすいのですが、大物も小物も重いものも軽いものも同時にライン化しないといけないとなると対応できないものが出てきてしまうというわけです。
自動化設備を導入するにはまず作業の標準化を
そういった状況から、自動化設備の導入を考える際には今の作業をそのまま自動化設備での作業に置き換えようとするのではなく、まずは自動化設備を導入することを前提とした作業にしてあげることが重要になります。つまり、A社はA社の作業、B社はB社の作業といった個別性をなくしつつ、ある程度取り扱うカテゴリ・商材を絞っていく必要があります。これをここでは作業の標準化といいます。作業標準化という言葉自体はお聞きになられた方も多いのではないかと思いますが、作業の自動化においても作業標準化はとても重要な活動となるわけです。
自動化設備の導入をお考えの企業でよくありがちなのが、今やっている既存の作業をそのまま自動化設備を使った作業に置き換えようとする発想を持ってしまうことです。これだと絶対にうまくいかないかというとそうではないのですが、きちんと作業標準化を進めた上で自動化を検討するほうが自動化対象の作業が明確になり、かつ対象作業を増やすことにもつながるため効果を得られやすくなります。ですので自動化設備の導入時にはまず自社で行っている作業が自動化設備と相性が良いのか、相性を良くするために標準化することはできるのかから考えるようにしていきましょう。
自動化はただの手段であり、決して目的ではない
自社の現場業務の特性と作業の標準化可否を整理した結果、思い描いていたような自動化が実現できないことも実際にはあります。だとしても悲観的になる必要はありません。自動化やDXができない現場は取り残されてしまうといった論調もありますので少し不安になってしまう気持ちはよく理解できますが、自動化設備の導入自体は目指したい状態を達成するための手段でしかありません。
自動化設備の導入は作業生産性を向上させたり作業を標準化させ誰でもが作業しやすくなるといった業務上のメリットはありますが、作業応援に入りづらい工程になる、急な割り込み作業をお願いできないなどといった柔軟性も落とす可能性もあるという意味では良いことばかりではありません。自動化設備を導入しなければ現場運営が維持できない、会社として目指す姿が達成できないために何が何でも導入しないといけないという状況でない限り、自動化設備を導入することを前提としていない今の現場に無理に合わせる必要もないという考え方もあります。
次に建てるセンターや、引っ越し、移転といった新しい場所で業務設計をする際に考えれば良いのです。自動化設備の導入を目的にするのではなく、あくまでも自分たちが目指したい状態を達成するための1つの手段であることを忘れないようにしましょう。
結び
いかがでしたでしょうか。右肩下がりの労働人口に対し、EC化率の上昇に伴って増える物量に対応していこうとすると庫内作業の生産性向上施策を実行していくことは自体は避けては通れません。今の世の中の流れを考えるとそれは間違いないのですが、すぐに自動化設備を導入できないのが難しいところですね。自社の強みを再整理し、その中における自動化の位置づけを整理していくことでやるべき施策が明確になってくるはずです。本記事を参考にしていただきまずは情報を整理してみてください。