HOW TO
実際に導入する
AGV導入前テストとトレーニングの目的や注意点、4つのポイント
テスト
AGV(無人搬送車)を導入する際、実稼働前にテストが行われます。
このテスト段階で、メーカーはシステムのバグや他の自動化機器との連携をチェック。
そしてテストが完了次第、ユーザーは手順書に基づいてオペレーションを確認しながらトレーニングを行います。実稼働をスムーズに始めるために欠かせない工程です。
綿密にテストする必要がありますが、着目すべきことを理解しないまま進めてしまっては、見落としが発生してしまうかもしれません。
本記事では、導入前テストの目的理解から、注意点、トレーニングで着目したいポイントまで詳細に解説します。
のちのち不具合が起こったり、オペレーションが混乱したりしないよう、テスト前の心構えとして読んでみてください。
目次
AGVの導入前テストとは
まずはAGV導入前テストの目的と概要を確認しましょう。目的意識を持ってテストに望んでください。
AGV導入前テストの目的
AGVの導入前テストでは、いよいよ実際にAGVを動作させます。この段階まで、基本的には要件定義書や手順書、フロー図といった書類ベースでの打ち合わせでしかありません。
次のような観点で各動作を試していきます。
・要件定義通りに作動するか
・手順書通りにオペレーションができるか
朝、スタッフが設備を立ち上げるところから通常オペレーション、イレギュラーまで一つひとつ確認することが肝要です。
システム上のエラーが発生したり、オペレーションの際、対応に困ったりしないように、実稼働を想定して細かな部分までチェックしましょう。
AGV導入前テストの概要
AGV導入前テストは、導入するマテハン機器の規模により最低でも1ヶ月、長いと3ヶ月ほどの期間にわたります。
まずはメーカー側で通電検査などAGV単体の動作を確認。次にWCS(倉庫制御システム)およびWMS(倉庫管理システム)の指令通りにAGVが動作するかをチェックします。
設備・システムの確認を終えた段階で、ユーザー側も交えてオペレーションの確認(トレーニング)を行っていきます。
複数の自動化機器を導入する場合には、WCS同士の連結テスト(総合テストとも呼ばれる)も必要です。たとえば、AGVでピッキングした商品をオリコンに入れてコンベアで運ぶケースでは、コンベア上で商品が滞留しないよう、スムーズな情報の同期が行われるか確認しなければなりません。
連結テストはWCSメーカー、WMSメーカーなどをまたいで実施されるテストとなります。
AGV導入前テストの注意点
AGVの導入前テストおよびその後のトレーニングは、詳細な条件ごとにテストシナリオを作って実施することが望ましいです。テストシナリオの事例として、バッチごとの検証が挙げられます。
バッチとは「ギフトラッピングが必要なオーダーの塊」「関東方面に出荷するオーダーの塊」など、複数のオーダーを一括で処理する1つの単位を指します。(時間で区切るケースもあります。)
一見、ピッキングのオペレーション手順は同じであっても、システム的な面で同じとは限りません。
下流工程に違いがあれば、ささいな条件の違いであっても確認を怠らないように注意しましょう。
テスト後にはトレーニング
テストが終わり、不具合がない状態まで確認(もしくは修正・改善)ができたら、いよいよトレーニングです。実作業をするスタッフ、現場を管理するスタッフ、社員といったメンバーが立会います。
テスト時に行ったAGV周辺機器の立ち上げ、通常フロー、イレギュラー処理を繰り返し練習し、習熟度をあげていきます。覚えるだけでなく、イレギュラー発生時にもつまずかずに現場で判断ができるところを目標にしましょう。
AGVの保守についても検討が必要です。サポートの範囲や自社内でのメンテナンス体制も考えておきましょう。
AGV導入前トレーニングの準備
AGVの導入前トレーニング時は、ダミー商品やダミーデータを準備しましょう。
たとえば、廃棄予定品や現場にある空箱、テープのような備品でも問題ありません。
在庫差異が生じてしまったり、汚破損のリスクがあったりするため、通常品ではなく簿外在庫を使うのが望ましいです。通常品はテストとトレーニングが完了し、実稼働する際に棚に格納します。
AGV導入前トレーニング 4つのチェックポイント
次にAGVの導入前トレーニングで、チェックしておきたいポイントを見ていきましょう。
1.通常時の運用
まずは、通常時の運用トレーニングです。
次のような動作やシステム内の動きを手順書・要件定義書と照合していきます。
1.WMSからWCSに注文データが連携される
2.WCSが商品の保管棚を関知し、AGVに指示を出す
3.棚を載せたAGVがピッキングステーションに到着する
4.ステーションではピックする商品が画面に表示される
5.ピッカーが商品をピッキングし、ハンディーターミナルで検品する
6.オリコンに格納し、1つの作業を完了する
こうしたオペレーションの中で、手順書の過不足やシステムのバグがあれば、適宜改善します。
2.イレギュラーの運用
AGVに関わるイレギュラー発生時の運用も必ずテストしましょう。
ユーザー側から、想定しうるパターンの積極的な提案が求められます。たとえば以下のケースです。
・出荷のキャンセル
・商品の誤ピック
・欠品
「誤ってピッキングしてしまった商品を棚に戻したい」「ピッキングし損ねたので、もう一度棚およびAGVを呼び出したい」こういったケースで在庫差異が発生することのないよう、手順を確認する必要があります。
これまでマニュアルのオペレーションで発生したイレギュラーをできるだけ洗い出してみてください。
3.システム・設備面
システム、設備の面では、AGV周辺機器が動作できる状態にするための立ち上げ作業からトラブル時の復旧作業までの手順をチェックします。
具体的に立ち上げ作業は、朝一の出勤者が行う電源の入れ方、立ち上げの順番などの手順が挙げられます。トラブル時の復旧は、商品が棚から落下してAGVがストップする際に発する、アラームの解除方法が挙げられます。
作業を開始・再開させるまでのオペレーションが、手順書に沿って滞りなく遂行できるか確認しましょう。
4.生産性
生産性もチェックしておきたいポイントです。
大前提として、要件定義の段階で1時間にピッキングしたい生産性を想定し、AGVの台数が決まります。トレーニングと同時に、実際のパフォーマンスを検証しましょう。
ストップウォッチを用い、1ピッキングあたり何秒かかるか計測。その数値から1時間あたりにピッキングできるおおよその数量を割り出します。
期待通りの効果が出せていない場合に簡単にできる対処法としては、全量検品から代表検品への切り替えが考えられます。時間をかけて改善するにあたっても、生産性の基準値を把握しておくことが大事です。
▶︎こちらの関連記事は近日公開予定です。
AGVの導入前テストは抜け漏れのないよう慎重に!
AGVの導入前テストの主たる目的は、動作確認です。机上で議論、設計をしてきた要件定義や手順書に沿って、想定通りの動きができるかチェックをします。
抜け漏れのないように、さまざまなテストシナリオを想定してみてください。テストが完了次第、トレーニングを進めます。あわせてイレギュラーやトラブル発生時のリカバリー方法も確認しましょう。そして、いざ実稼働です。円滑な稼働スタートを目指しましょう。
実稼働が始まってから、AGVエリアを都度見直すことも重要です。以下の記事も参考にご覧ください。