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ベンダー選定を成功に導くベンダー評価6つのプロセスと評価項目!
ベンダ選定
RFP(提案依頼書)を作成して提出し、メーカー・ベンダー各社から提案書が出揃ったら各社の内容を評価します。その中からプロジェクトを一緒に推進する1社を決定するためです。
ベンダー評価に慣れていない場合、複数社の提案書を前にして、何をどういう視点で評価すれば良いのか悩んでしまうケースもあるでしょう。当ポータルサイトのテーマ「物流の自動化」を推進するプロジェクトにあたって、初めてベンダー選定に取り組む担当者の方もいらっしゃると思います。
本記事では提案内容を評価するにあたってのプロセスや、提案内容を評価する上で最低限抑えたいポイントについてお伝えしていきます。弊社にもご相談が多く寄せられますので、これまでのご支援を通じて見聞きしてきたこと、お伝えしていることをベースに順を追って見ていきましょう。
目次
ベンダー評価6つのプロセス
プロジェクトのベストパートナーを選ぶ上で、公平かつ客観的なベンダー評価が欠かせません。提案書が届くと、ついつい1つずつ見ていきたくなりますが、明確な根拠を持って評価ができるように、あらかじめ評価方法を決めておくことが望ましいといえます。
ベンダー評価のプロセスは以下の通りです。
1.評価者の決定
2.評価方法の決定
3.評価項目の決定
4.評価項目に対する配点の決定
5.提案の点数化
6.評価結果の比較
ひとつずつ詳しく解説します。
ベンダー評価のプロセス1.
評価者の決定
まずは提案書の内容を見て評価をする人を決めましょう。一般的には自動化プロジェクトなどのプロジェクト体が組成され、メンバーがアサインされていると思いますので、そのプロジェクトメンバーが評価者となるケースが多いです。
加えて部長にも評価者になってもらうのか、さらにその上の役職の方はどうするのか。このあたりの考え方は各社で異なります。しっかり話し合いの上で決定していきましょう。
ベンダー評価のプロセス2.
評価方法の決定
評価者が決まれば、次は評価方法を決めていきましょう。多く用いられているのが、評価項目を決定して、その項目ごとに5段階評価で点数をつける方法です。その合計得点でベンダーからの提案書に順位をつけていきます。
この方法は物流の自動化プロジェクトならではのやり方ではなく、一般的な方法ではありますが、十分に適応可能なので活用してみてください。
ベンダー評価のプロセス3.
評価項目の決定
評価項目については、自社の狙いや考えが大きく反映されるため、しっかりと協議・検討が必要になってきます。各社、重視する項目が異なるので、一律には項目を固定化できるものではありません。
一方で多くの企業で共通して使える評価項目もあるため、後述していきます。
ベンダー評価のプロセス4.
評価項目に対する配点の決定
評価項目の決定後、各項目に対して配点を決めていきます。重要視したい評価項目を設定しましょう。
例えばシステムの機能面を最重要視したい場合、点数に重みを付けて2倍、3倍にして評価したり、すべての評価項目の合計点数を100点と設定して50点を振り分けたりするといった配点の方法が考えられます。
のちに上層部で判断が覆されることのないように、重みづけをする評価項目について社内での合意形成も重要です。
ベンダー評価のプロセス5.
提案の点数化
評価項目に対する配点が決まれば、提案書を点数化できます。前項で決めた基準をもとに、根拠を明確に説明できるように、点数化しましょう。
人によって評価軸がずれないように、点数の付け方に基準を設けたり、評価項目を細分化したりすることも有効です。ただし、評価は定量的な数値がすべてではありません。プレゼンテーションの内容やコミュニケーション能力などの定性的な評価は、個人の採点根拠としてコメントを残すと良いでしょう。
ベンダーからプレゼンテーションを受ける場合は、プレゼンテーションも点数化します。
ベンダー評価のプロセス6.
評価結果の比較
評価項目の合計点数を集計し、結果を比較します。プロジェクトのパートナーに最適な1社を選定しましょう。
物流の自動化プロジェクトを推進する際の全体の流れは、以下の記事で解説しています。
ベンダー評価項目・評価基準
次に、多くの企業で共通して使える評価項目を紹介します。
1.自社の目的を実現できるように要件が網羅されているか
自社の目的を実現できる要件の網羅性は、提案内容を評価する上で最も大事なポイントです。提案書を見ると、どうしても価格に目がいきやすい側面があります。しかしその前にRFPで伝えた自社の目的が達成できる内容になっているかをしっかりと評価することが肝要です。
物流の自動化は、効率化の実現が目的として大きいでしょう。どれだけの効果をあげられるのかを見ていくことが重要になります。
2.自社の理解を十分にした上での提案となっているか
提案依頼に応えてくれるメーカーやベンダーも多くの案件を抱えています。当然のことながら提案書のひな形を使用していますが、稀に「これはどの会社でも言えることじゃないのか?」と思ってしまうような提案もないとはいえません。
そんなひな型化された提案書ではなく、貴社のビジネスや想いに対して、高い理解度を示した上での提案となっているかチェックしてみましょう。
3.パートナー企業として付き合えそうだと感じることができるか
ユーザーとベンダーの一時的な関係として捉えるのではなく、対等なパートナーとしてお付き合いができそうかという点も非常に重要です。
自動化設備は導入して終わりではなく、そこからが始まりです。予期せぬトラブルが発生することもあれば、機能のアップデートも必要でしょう。そういったやり取りが続いていきますので、長くお付き合いできる相手かどうかということをしっかりと見極めることも重要になってきます。
4.ノックアウトファクターはクリアしているか
いくら良い提案内容になっていたとしても、ノックアウトファクターがクリアできていなければ採用できません。ノックアウトファクターとは、この項目が自社の要求をクリアできなければ、その項目だけで提案は採用できないと判断される項目です。
代表的な項目としてコストが挙げられます。予算を1円でも超えていれば採用しません、という世界は実際にあります。ただし「交渉の余地がありそう」「交渉してでも一緒にやりたい」と思えるならばノックアウトしないで、評価点で調整するようにしてみましょう。
5.独自性に魅力を感じられるか
応札しているメーカー・ベンダー各社の製品は、完全にオリジナル製品であることは少なく、類似性があるものがほとんどだといって良いと思います。そのため、並べて比較するとどこも似たような内容になってくる部分がどうしてもあります。
目的を達成できていることが大前提ではありますが、評価が拮抗しているようならば独自の提案内容を出してきている企業をしっかり評価するようにしましょう。
6.安定性のある信頼できる企業か
メーカー・ベンダー企業の安定性も確認しましょう。会社の規模や財務状況から、倒産リスクがないか判断します。選んだメーカー・ベンダーが事業縮小や倒産をすれば、プロジェクトが中断してしまう可能性があるでしょう。稼働後においても、保守サービスが受けられなくなるリスクがあります。安心して任せられる事業継続性がある企業か、評価しましょう。
7.自社の要望にマッチする実績と能力がある企業か
実績も評価基準のひとつです。自社の要件に近い実績の有無、実績の数などを評価しましょう。ベンダーのホームページに掲載されている情報からは読み取れない場合、事前にRFI(情報提供依頼書)を作成し、商品やサービスの情報と一緒に実績を開示してもらうのも手です。
8.イニシャルコストとランニングコストに妥当性があるか
導入時にかかるイニシャルコストと稼働後のランニングコストの妥当性も評価項目として挙げられます。「◯◯は費用に含みません」「◯◯は別途見積もり」などの前提条件に注意しながら、各社同じ条件で評価する必要があります。
見積もりに根拠はあるか、予算との折り合いはつくか、保守運用コストは妥当な金額かなどを確認しましょう。大がかりなプロジェクトになるほど、要件が追加になりコストが増大しやすい傾向にありますので、あらかじめ考慮すると良いですね。
9.スケジュールと納期に妥当性があるか
スケジュールと納期も評価します。納期は短い方が良いと感じるかもしれませんが、短すぎる場合、成果物の品質低下が懸念されます。またユーザーも厳しいスケジュールに合わせてプロジェクトを進めなければならず、スケジュールが遅延しないように体制を組まなければなりません。
一方で納期が長すぎれば、その分ビジネスチャンスを逸してしまう可能性もあります。無理なくプロジェクトを進められる、妥当性のあるスケジュールと納期が設定されているか評価してみてください。
公平なベンダー評価を通じて、ベストなベンダー選定を!
今回は提案内容を評価し、その中から1社を選定するための流れやポイントについて解説させていただきました。評価の観点や基準が、人によって異なるようでは、正しい評価ができません。
提案書を受け取るまでに評価項目や配点を決めるところまで段取りできていれば、速やかにベンダー選定ができます。
慣れない作業ではあると思いますが本記事を参考にしていただき、着実にプロジェクトを進めていきましょう。
当社CAPESは、物流コンサルティング事業の一環としてベンダー選定を支援しています。RFPの作成からベンダー評価まで、ノウハウに不足を感じるようであれば、お気軽にお問い合わせください。
後悔のないようにベストパートナーを選定し、物流の自動化を実現していきましょう。
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執筆者
田中 なお
物流ライター。青山女子短期大学を卒業後、物流会社に14年間勤務。倉庫の現場管理を伴う、事務職に従事する。その後、2022年にフリーライターとして独立し、物流やECにまつわるメディアで発信。わかりやすく「おもしろい物流」を伝える。
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監修者
西尾 浩紀
大学卒業後、ジュピターショップチャンネル、アビームコンサルティングを経て2015年モノタロウ入社。モノタロウではAGVピッキングシステムを始めマテハン設備を多数導入した国内最大規模の9万㎡の平屋建て物流センター立ち上げプロジェクトのマネージャーとして、業務プロセス設計から、総務・労務業務設計やスタッフ採用計画に至るまでの多岐に亘る業務設計をリード。センター稼働後はセンター長としてセンターマネジメントを実施。2018年株式会社CAPES設立。スタートアップから中小、大企業まで企業規模・ステージを問わず幅広く対応してきた実績を有する。特に自動化設備の導入・運用に関する豊富な知見を有し、EC物流の構築、物流センターの立ち上げ支援を得意とする。